- 一人暮らしでも迷わない「ペット防災マニュアル」を作ろう
- 第1章:ペット防災マニュアルが必要な理由
- 第2章:最初に決める“基本方針”4つ
- 第3章:最低限そろえる備え(72時間〜1週間)
- まずは「72時間」を基準にして、1週間へ積み上げる
- 最低限セット全体像(優先順位トップから)
- 1)水(断水・給水制限に備える)
- 2)食事(フード):急な変更を避けつつ、食べられる形を残す
- 3)トイレ:使える形に“変換できる”備えが強い
- 4)移動(キャリー/クレート/リード):ここが“マニュアルの核”
- 5)迷子・脱走対策:発災時は「一瞬の隙」で起きやすい
- 6)保温・冷却(室温対策):停電を前提に“電気なし”で考える
- 7)衛生(清潔・消臭):感染対策というより「生活を回す」ため
- 8)情報・連絡:スマホが使えない想定を1つ入れる
- 9)薬・ケア(必要な子のみ):無理に増やさず「情報を揃える」
- 72時間→1週間へ増やす時の考え方
- この章の小さなゴール(今日できること)
- 第4章:家の安全対策(平常時にしかできない)
- 第5章:留守番中に災害が起きた時の備え
- 第6章:発災直後〜避難までの行動手順
- 第7章:避難所・車中・知人宅で困ることと対策
- まとめ
- チェックリスト(別枠・コピー用)
一人暮らしでも迷わない「ペット防災マニュアル」を作ろう
災害への備えを調べ始めると、情報が多すぎて「結局なにを、どの順番でやればいいの?」となりがちです。特に犬や猫がいると、食事やトイレだけでなく、移動(キャリー)・避難所のルール・留守番中の停電や断水・脱走防止など、気になる点が一気に増えます。
一人暮らしの場合は、手伝ってくれる人がすぐ近くにいないことも多く、準備の方向性が定まらないまま「いつかやろう」と先延ばしになりやすいのも現実です。ただ、防災は完璧を目指すよりも、最低限を決めて、積み上げるほうが続きます。
この記事は、地震・台風・豪雨・洪水・停電・断水など災害の種類が違ってもブレないように、犬猫の防災を「共通原則」に沿って1つの手順書(マニュアル)としてまとめます。
この記事でわかることは、次の4つです。
- 最初に決めるべき基本方針(同行避難・在宅避難の条件・預け先/連絡網・持ち出し優先順位)
- 最低限そろえる備え(72時間〜1週間の水、フード、トイレ、衛生、情報、移動)
- 留守番中の災害に備える設定(停電・断水・室温・転倒/誤飲・脱走への対策)
- 発災直後〜避難までの行動手順と分岐(避難所に行く/在宅避難の判断材料、避難先での困りごと対策)
読み終わるころには、「今日はこれ」「今週はこれ」「今月はここまで」と、無理のない計画が立つはずです。必要な部分だけを見返して使えるように、チェックリスト化しやすい形で進めていきます。
第1章:ペット防災マニュアルが必要な理由

災害別に備えるより「共通して困ること」を先に固める
地震・台風・豪雨・洪水など、災害の種類は違っても、犬や猫の生活で起きやすい困りごとはかなり共通しています。たとえば、
- 水・トイレ・食事が足りなくなる(断水、物流停止、店が開かない)
- 室温が保てない(停電で冷暖房が止まる)
- 移動が必要になる(避難、建物の損傷、近隣トラブル)
- 脱走・迷子のリスクが上がる(ドア開放、パニック、隙間)
- いつもと違う環境でストレスが強くなる(音、人、におい、同居動物)
この「共通して困ること」を先に押さえておくと、災害の種類ごとの細かい差に振り回されにくくなります。逆に、災害別の対策だけを集めると、やることが増えすぎて「結局、何から手を付けるか」決めにくくなります。
だからこの記事では、まず共通原則で使えるマニュアルとして、方針→準備→行動の順番で組み立てます。災害ごとの差は、あとから上書きできます。
一人暮らしは「判断と実行」をひとりで回す前提になる
一人暮らしだと、発災直後に誰かが代わりに動いてくれることは期待しにくいです。たとえば、
- 自分が外出中に災害が起きても、すぐ帰れない可能性がある
- 家の中が散乱していても、片付けや確保を一人で行う必要がある
- 連絡先や預け先が決まっていないと、判断が止まりやすい
この「判断が止まる」状態が一番つらいので、事前に決めることを減らしておく=マニュアル化が効きます。迷いが減ると、結果的にペットの安全確保もしやすくなります。
犬と猫で“困り方”が違うポイント
犬の場合:屋外移動・排泄・鳴き声が課題になりやすい
犬は散歩や排泄が生活に組み込まれていることが多く、災害時に次の点で詰まりやすいです。
- 排泄の場所が変わる(避難所や車中でのルール、におい対策)
- 外に出る必要が出る(周囲が危険・落下物・ガラス・増水)
- 鳴き声で周囲に気を遣う(避難所や集合住宅)
- 首輪・リードが生命線になりやすい(パニック時の逸走防止)
犬は「移動しやすい」反面、環境の変化で興奮しやすい子もいます。だからこそ、“移動の準備”と“落ち着く型”(キャリー・クレート・声かけ・待機場所)を普段から作っておくのが大切です。
猫の場合:隠れる・逃げる・捕まえにくいが課題になりやすい
猫は音や揺れに敏感で、発災時に本能的に「隠れる」「逃げる」が強く出やすい傾向があります。
- 見つからない/捕まえられない(家具の裏、ベッド下、天袋)
- キャリーに入れるのが難しい(嫌がる、暴れる)
- 脱走リスクが高い(ドアの開閉、窓、破損した網戸)
- トイレが変わると我慢しやすい(環境変化で排泄が不安定)
猫は「持ち出すまで」が最大の山場になりやすいので、事前に“捕まえる手順”と“キャリー誘導”を作っておくことが、マニュアルの中心になります。
マニュアルがあると、災害時の「迷い」を減らせる
災害時の行動で大事なのは、スピードよりも安全側の判断を取りやすい状態です。マニュアルがあると、
- 何から確認するかが決まる(自分→ペット→持ち出し→避難判断)
- 備えの抜けが見つけやすい(チェックリスト化できる)
- 代替案があるので焦りにくい(家にあるもので代用できる)
- 犬猫それぞれの“詰まりポイント”を先回りできる
次の章では、迷いを減らすために最初に決めておくべき「基本方針」を4つに整理します。ここが固まると、準備の優先順位が一気に決めやすくなります。
第2章:最初に決める“基本方針”4つ

まずは「方針」を決めると、準備が一気にラクになる
ペット防災で多い詰まりは、「何を買うか」以前に、方針が決まっていないことです。
方針が曖昧だと、キャリーの使い方も、備蓄の量も、留守番対策も全部ブレます。
ここでは、災害の種類に関係なく使えるように、最初に決めることを 4つに絞ります。
完璧に決めきれなくても大丈夫です。「仮決め」でいいので、まず形にします。
基本方針①:同行避難を“基本”にするか(できない時の条件も決める)
多くの自治体で案内される考え方として、ペットは「同伴避難」ではなく、飼い主が一緒に避難する「同行避難」が前提になることが多いです(※受け入れ方法は避難所ごとに違うため、あとで確認が必要です)。
ここで決めたいのは次の2点です。
- 原則:同行避難する(ペットを置いていかない)
- ただし例外:在宅避難に切り替える条件
自分に聞く質問(仮決め用)
- 避難所がペット不可・受け入れ困難だった場合、在宅避難に切り替える想定はある?
- 建物が安全で、水やトイレが確保できるなら、家に留まる選択肢を持てる?
- エレベーター停止・階段移動が必要でも、キャリーで運べる?
ここを決めると、次章以降の「持ち出し」「キャリー」「避難先で困ること」の備えが具体化します。
基本方針②:在宅避難にする“条件”を言語化する(YES/NOの基準)
在宅避難は、状況によっては有力ですが、判断基準がないと「怖いけど家にいる」「本当は危ないのに留まる」など迷いが出ます。そこで、在宅避難にしてよい条件/避難すべき条件を先に文章にしておきます。
在宅避難にしやすい条件(例)
- 建物の損傷が少なく、倒壊や浸水のリスクが低い
- ガス漏れ・火災・土砂災害などの差し迫った危険がない
- 室温管理の見通しが立つ(停電時も含めて)
- 水・フード・トイレの最低限がある(72時間〜)
迷わず避難する条件(例)
- 浸水・土砂・火災など、場所そのものが危険
- 建物の大きな損傷、ガラス破損が多く安全確保が難しい
- 室温が保てない(猛暑・厳冬)/停電が長引く見込み
- 近隣の状況が悪化し、生活継続が難しい
ここは「正解を当てる」よりも、迷いを減らすのが目的です。あとで見直せます。
基本方針③:預け先・連絡網を“2ルート”用意する(ひとりで抱えない)
一人暮らしの最大の弱点は、外出中の災害や体調不良で「動けない」時に、代わりがいないことです。ここは物資より先に決める価値があります。
決めるべきは「預け先」と「連絡手段」を最低2ルート。
- ルートA(第一候補):近所の家族・友人・同僚など、すぐ連絡できる人
- ルートB(第二候補):少し遠くても頼れる人/近隣で鍵の受け渡しができる人
自分に聞く質問(整理用)
- 自分が帰宅できない時、鍵の受け渡しはどうする?
- 連絡がつかない場合に備え、伝言の置き場(メモ、冷蔵庫、玄関内側など)を決められる?
- ペットの情報(性格、持病、苦手、フード量、トイレ)を、誰でも分かる形で渡せる?
この章のゴールは、「頼る相手を確保すること」ではなく、候補と手順を紙に落とすことです。
基本方針④:持ち出しの優先順位を決める(3段階に分ける)
災害時は、全部持っていくのは難しいことが多いです。そこで、最初から「優先順位」を決めておくとパニックを減らせます。
優先順位の3段階(例)
- 最優先(命に直結):ペットの確保(首輪・リード/キャリー)、迷子対策(迷子札等)、水、常備薬(必要な場合)
- 次点(生活維持):フード、トイレ用品、消臭・衛生、最低限の食器
- 余裕があれば(快適性):毛布、タオル、落ち着く物、予備の服やケア用品
持ち出しの優先順位が決まると、備蓄の量や収納場所(玄関近くにまとめる等)も決めやすくなります。
犬・猫で「方針」の決め方が少し変わる点(H3)
犬:移動と管理の現実(運べるか/落ち着けるか)を先に確認
犬は同行避難しやすい一方で、避難所では「鳴き声」「排泄」「周囲配慮」が課題になりやすいです。だから方針決めでは、
- キャリー(またはクレート)で運べるか
- 避難先で待機できるか
- 排泄をどうするか
をセットで考えるとブレにくいです。
猫:捕獲と脱走防止が最優先(キャリー前提で逆算)
猫は「避難するかどうか」以前に、発災直後に キャリーに入れられるか が最大の分岐になりやすいです。方針決めでは、
- 隠れた時の確保手順(どこに逃げやすいか、塞ぐ場所)
- キャリーを出しっぱなしにするか(慣れさせる)
- 脱走しやすい動線(玄関、窓、ベランダ)をどう塞ぐか
を先に言語化しておくと、次の備えが迷いません。
この章のゴール:4つを“紙に書ける状態”にする
ここまでの4つは、知識として知っているだけでは効果が薄いです。次のように短くメモできれば十分です。
- 同行避難:原則する/例外は○○の場合は在宅
- 在宅避難:OK条件は○○/避難条件は○○
- 預け先:Aさん(近所)/Bさん(別ルート)+鍵の手順
- 持ち出し:最優先→次点→余裕があれば の3段階
次章では、この方針を前提に、72時間〜1週間の最低限の備えを「優先順位」と「代替案つき」で具体化していきます。
第3章:最低限そろえる備え(72時間〜1週間)

まずは「72時間」を基準にして、1週間へ積み上げる
災害直後は、物流や復旧がすぐ戻らないことがあります。そこで備えは、いきなり完璧を目指すより、
- まず72時間(3日)を確保
- 余裕が出たら 1週間分へ拡張
の順が現実的です。
この章では、犬猫共通の“最低限セット”を 優先順位つきで示し、さらに「家にあるものでの代替案」も併記します。
最低限セット全体像(優先順位トップから)
優先順位は「命に直結しやすい順」です。
- 水
- 食事(フード)
- トイレ
- 移動(キャリー/リード等)
- 迷子・脱走対策
- 保温・冷却(室温対策)
- 衛生(清潔・消臭)
- 情報・連絡
- 薬・ケア(必要な子のみ)
「全部そろわないと意味がない」ではなく、上から順に埋めていけばOKです。
1)水(断水・給水制限に備える)
犬猫ともに、水は最優先です。断水時は人の分だけで精一杯になりやすく、ペットの水が後回しになりがちです。
- 最低ライン(72時間):飲み水を切らさない量を確保
- できれば(1週間):余裕を持って増やす
代替案(家にあるもので)
- 未開封の飲料水があれば、それを「ペット用」に回す想定を持つ
- 断水前に余裕があれば、清潔な容器に水を分けておく
- 給水が始まっても、運搬が大変になりやすいので「運べる単位」で管理する
※水が飲めない・飲み方が明らかにおかしいなど異常があれば、無理に判断せず動物病院へ相談できるルートを確保しておきます。
2)食事(フード):急な変更を避けつつ、食べられる形を残す
災害時は、フードが手に入りにくい/いつもの銘柄がない、が起こりやすいです。犬猫ともに「急な変更」でお腹を壊すこともあるので、備えの基本は “いつものフード”中心です。
- 最低ライン(72時間):普段のフードを切らさない
- できれば(1週間):少し余裕を持つ+小分け
代替案(家にあるもので)
- いつものフードを「小分け袋」に分けておく(避難時に取り出しやすい)
- 水が貴重になるので、洗い物が少ない器や使い捨ての工夫を考える
- 食欲が落ちやすい子は、食べやすい形(普段から慣れている形)を優先する
3)トイレ:使える形に“変換できる”備えが強い
トイレは、避難所・車中・在宅で困り方が変わります。だから「備品を揃える」だけでなく、状況に合わせて使える形にしておくのがポイントです。
犬のトイレ
犬は散歩ができない/外が危険、という状況がありえます。室内や避難先での排泄は「慣れ」が重要です。
- 最低ライン(72時間):室内で排泄できる手段(シート等)
- できれば(1週間):回収・消臭・予備を増やす
代替案
- 家にあるビニール袋+新聞紙/古布で“回収”の手段を作る
- 洗えない前提で、汚れを広げない敷き方を考える(床を守る)
猫のトイレ
猫は環境変化で排泄を我慢しやすく、トイレが合わないとストレスになります。避難時は「小さくても使える」形が鍵です。
- 最低ライン(72時間):携帯できるトイレ環境(簡易トイレや小さな容器等)
- できれば(1週間):砂の量・捨て方まで含めて想定する
代替案
- 小さな箱や容器を「非常用トイレ」に転用できるよう想定
- 処理のための袋・消臭の工夫(密閉)を用意しておく
※排泄が極端に出ない、苦しそうなどがあれば、自己判断せず動物病院へ相談を。
4)移動(キャリー/クレート/リード):ここが“マニュアルの核”
避難の現場では、キャリーに入っていないと安全確保が難しい場面が増えます。移動手段は「持っている」だけでなく、すぐ使える状態が重要です。
犬:リード+キャリー
- すぐ掴める場所にリードを置く
- キャリー/クレートは「落ち着ける場所」にしておくと強い
- 体格や階段移動を想定し、運べる形かを確認する
猫:キャリー最優先
- 猫は“確保→キャリー”が最大の山場になりやすい
- キャリーを普段から見える場所に置き、嫌な場所にしない工夫が有効
- 扉の開閉や持ち上げがスムーズか確認しておく
5)迷子・脱走対策:発災時は「一瞬の隙」で起きやすい
災害時はドアの開閉が増え、部屋の片付けや移動で注意が散ります。脱走は「飼い主が悪い」ではなく、状況的に起こりやすいので、仕組みで減らします。
- 最低ライン:迷子になった時に“連絡がつく”状態
- できれば:二重の対策(首輪+別の識別)
具体的には、次の考え方が役立ちます。
- 連絡先が分かる状態を作る(迷子札などの発想)
- 外に出る可能性がある時は、犬猫ともに「確保の優先順位」を上げる
- 猫は特に、玄関・窓・ベランダなど“逃げ道”の管理を強化する
6)保温・冷却(室温対策):停電を前提に“電気なし”で考える
停電時は冷暖房が止まります。特に夏冬は「人よりペットのほうが影響を受けやすい」ことがあります。ここは専門用語より、室温を守る工夫として整理します。
- 最低ライン:直射日光を避ける/風通し・保温ができるスペースを作る
- できれば:暑さ・寒さの両方に対応できる準備
代替案
- 断熱(カーテン・毛布・段ボール等)で空間を小さくして守る
- 冷却・保温は「直接体に当てすぎない」「逃げ場を作る」を意識する
※ぐったり、呼吸が苦しそう等があれば、早めに動物病院へ相談できるようにします。
7)衛生(清潔・消臭):感染対策というより「生活を回す」ため
災害時は水が貴重で、掃除や洗濯が難しくなります。衛生用品は「必需品が少ないほど強い」です。
- 排泄の処理に必要な袋
- 拭くためのシートやタオル類
- 匂いが広がらない工夫(密閉)
代替案
- 古タオル・古布を非常用に回す
- ごみ袋を多用途に使う想定を持つ(回収・防水・汚れ隔離)
8)情報・連絡:スマホが使えない想定を1つ入れる
情報は、混乱時ほど「必要なものだけ」が役に立ちます。加えて、一人暮らしは連絡が途切れると詰まりやすいので、最低限を決めます。
- 避難所や給水の情報を確認する手段
- 家族・預け先・近隣協力先への連絡方法
- 連絡先カード(紙)を用意する発想
代替案
- スマホが使えない時に備え、必要情報を紙にまとめて置く
- 近所の掲示や放送にアクセスできる行動を想定する
9)薬・ケア(必要な子のみ):無理に増やさず「情報を揃える」
持病がある子や、継続的なケアが必要な子は、薬そのもの以上に「情報」が重要です。
- 服用中の薬がある場合:名称・量・頻度を紙にまとめる
- かかりつけの連絡先、通院歴のメモを作る
- 異変時は自己判断せず、動物病院へ相談する方針を持つ
72時間→1週間へ増やす時の考え方
「量を増やす」より、次の2つが効きます。
- 小分け化:持ち出しやすく、管理しやすい
- 置き場所の固定:玄関近く、キャリーの近くなど“取り出す場所”を決める
備えがバラバラだと、いざという時に集めるだけで疲れます。
「持ち出し袋(最低限)」と「家に残す備蓄(追加分)」の2層に分けると、マニュアルとして使いやすくなります。
この章の小さなゴール(今日できること)
この章は、全部揃えるよりも 上から順に穴埋めが正解です。
- 水とフードの“最低ライン”を決める
- トイレと回収の手段を「災害でも使える形」にする
- キャリー(猫は最優先)を“すぐ使える場所”に固定する
次の章では、平常時にしかできない 家の安全対策(転倒・誤飲・ガラス・脱走経路・停電時の危険)を、やりすぎを避けながら具体化します。
第4章:家の安全対策(平常時にしかできない)

「家を安全にしておく」ことが、いちばん確実な防災になる
災害時に本当に困るのは、物が足りないことだけではありません。
部屋の中が危険だと、在宅避難も難しくなり、避難そのものも大変になります。
家の安全対策は、発災後にやろうとしても手が回りません。だからこそ「平常時にしかできないこと」として、ここでマニュアル化しておきます。ポイントは次の3つです。
- 倒れる・落ちる・割れるを減らす(ケガとパニックを防ぐ)
- 誤飲・絡まりを減らす(犬猫の事故を防ぐ)
- 脱走しやすい動線を潰す(迷子を防ぐ)
完璧に全部やる必要はありません。まずは「危ない場所を1つ減らす」からでOKです。
家具転倒・落下物:犬猫の“逃げ場”を奪わない
揺れや強風で怖いのは、家具そのものより「倒れて通路が塞がる」「落下で破片が広がる」ことです。犬猫はパニックで走ったり隠れたりするため、危険が増えます。
まず優先する場所
- 寝る場所の周り(人もペットも長時間いる)
- 玄関〜避難動線(逃げ道が塞がると致命的)
- ケージ・キャリー周辺(避難準備が崩れる)
すぐできる対策(考え方)
- 背の高い家具は「倒れない」より先に「倒れても塞がない位置」へ寄せる発想
- 上に重い物を置かない(落下の勢いが増える)
- ガラス扉の近くは、犬猫の待機場所にしない
ガラス・陶器・割れ物:破片は“後から効いてくる”
破片は見えにくく、足裏や肉球に刺さるリスクがあります。片付けが遅れる災害時は特に要注意です。
- ガラス製の小物は、低い位置や奥に寄せる
- 落ちやすい花瓶や瓶は、倒れにくい場所に固定する
- 破片が出た時に備え、犬猫を一時的に隔離できる場所(ケージ/別室)を作っておく
※掃除中に犬猫が踏まないよう、片付け前提で「一時待機場所」があるだけで安全度が上がります。
誤飲・絡まり:災害時は“いつもより飲み込みやすい”
部屋が散らかると、普段は触れない物が床に落ちます。犬猫はストレスや興奮で、普段より口に入れがちです。
優先して片付ける“危険物”の例
- 小さな電池、薬、サプリ、輪ゴム、ヘアゴム
- 糸、紐、リボン、釣り糸、猫じゃらしの紐部分
- 画びょう、クリップ、針、ハサミ
- 破損しやすいプラスチック片
コツ(完璧にしない工夫)
- 「床に落ちたら危険」な物だけを、まずは箱にまとめる
- 収納は“扉付き”か“上段”に寄せる(開放棚を減らす)
- 猫は高い場所も届くので、猫の動線上を意識する
脱走防止:玄関・窓・ベランダの“3点チェック”
脱走は「揺れが怖い」「ドアを開けっぱなしにした」「片付けで気が散った」など、複数の要因で起きやすくなります。仕組みで減らします。
玄関(最優先)
- ドアを開ける前に犬猫を別室・ケージへ(習慣化が強い)
- 玄関に“二重の区切り”を作る発想(ゲート等のイメージ)
- 玄関にキャリーを置く場合、転倒・落下しない位置に固定する
窓・網戸
- 網戸が外れやすい場所、レールの緩みを確認
- 強風で窓が勝手に開くタイプなら、閉まる仕組みを意識する
- 台風・豪雨の前は、ベランダ側の整理(飛散物)もセットで考える
ベランダ(特に猫)
- ベランダは「普段OK」でも、災害時は危険が増える(飛来物、破損、転落)
- 隙間が増える(破損・ズレ)前提で、避難前後は出さない方針にする
停電時の危険:暗さは“パニック”と“事故”を増やす
停電は、犬猫にとって「突然環境が変わる」出来事です。暗さや音で警戒が強くなり、転倒や脱走が起きやすくなります。
- 通路に物を置かない(つまずき・パニック走りを防ぐ)
- ケージや待機場所は、落下物が少ない位置に移す
- 暗い中で捕まえようとして追いかけると、逃げが強くなることがあるため、落ち着かせる手順を後で作る
避難動線:人とペットの“動き”を一回シミュレーションする
避難動線は「実際に歩いてみる」と穴が見つかります。
- 玄関までの道に、引っかかる物がないか
- キャリーを持って通れるか(曲がり角、段差)
- 階段移動になった場合、片手が塞がっても安全に降りられるか
この確認だけで、「キャリーの置き場所」「家具の向き」が自然に決まることが多いです。
犬・猫で特に注意したいポイント
犬:パニック走りと“噛む・吠える”リスクを想定する
犬は驚くと走ったり、警戒で吠えたりすることがあります。災害時はそれが強く出る場合があるため、
- 走り回っても危険が少ない“待機場所”を作る
- 玄関に近い場所で確保しやすい配置にする
- 人がケガをすると対応が難しくなるので、無理に押さえ込まず落ち着かせる方針を持つ
猫:隠れ場所と“捕まえられない”状態を作らない
猫は「隠れる」が強く出ます。隠れ場所自体をゼロにする必要はありませんが、発災時に困るのは、
- 奥に入りすぎて出てこない
- 家具が倒れて閉じ込めに近い状態になる
- キャリーに入れられず避難判断が止まる
というパターンです。そこで、
- 家具の隙間(冷蔵庫裏、洗濯機裏など)を意識して塞ぐ発想
- “隠れていい場所”を決めておく(そこなら確保しやすい)
- キャリーを出しっぱなしにするか、すぐ出せる場所に固定する
が効きます。
やりすぎ・危険な例(注意喚起)
「安全のため」が逆に危険になることがあります。次は避けます。
- 火器を使う対策(室内で火が出やすい・換気できない状況もある)
- 倒れそうな物の上にさらに物を積む(落下が増える)
- 紐・コード類を束ねず放置(絡まり・誤飲の原因になる)
- 避難用に玄関へ物を集めすぎて通路が塞がる(人もペットも危険)
この章の小さなゴール(今日できること)
家の安全対策は、1回で全部やるより、“1エリアずつ”が続きます。
- 玄関〜部屋までの通路から、つまずく物を1つ減らす
- 割れ物を1つ奥へ移動する
- 玄関・窓・ベランダの「脱走ルート」を1つ潰す
次の章では、外出中や留守番中に災害が起きたときのために、事前にできる設定(停電・断水・室温・脱走・連絡)を中心に整理します。
第5章:留守番中に災害が起きた時の備え

「帰れない前提」で、家の中を“事故が起きにくい状態”にしておく
一人暮らしで一番不安が大きいのが、留守番中に災害が起きた場合です。
地震や台風で交通が止まる、避難情報が出る、停電や断水が続くなど、すぐ帰れない可能性は現実にあります。
ここで大事なのは、「留守番中に何かをしてもらう」よりも、事前に“危険が起きにくい設定”にしておくことです。
この章では、停電・断水・室温・脱走・ケガ/誤飲のリスクを、やりすぎを避けながら整理します。
停電:暗さ・室温・水の停止がセットで来る
停電は「照明が消える」だけでなく、冷暖房・給湯・給水ポンプ(建物による)が止まる可能性があります。留守番中は特に、室温の悪化が大きなリスクになります。
事前にできる設定
- 直射日光が当たる部屋を避けて待機場所を決める(夏は特に重要)
- ケージやベッドを、窓際・ガラスの近く・落下物が多い場所から少し離す
- 室温が上がりやすい部屋なら、遮光カーテンやすだれ等で熱を入れない工夫をする
- 冬は、床からの冷えが強い場所を避け、毛布などで“下冷え”を減らす発想を持つ
※「停電=必ず危険」ではありませんが、暑さ寒さに弱い子、体調が不安定な子は影響が出ることがあります。様子が明らかにおかしい場合に備え、相談先(動物病院等)を事前に確認しておくのが安全です。
断水:飲み水とトイレが先に詰まりやすい
断水になると、飲み水だけでなくトイレの処理・掃除が難しくなります。留守番中は、汚れが広がらないよう「回収できる仕組み」が効きます。
事前にできる設定
- 水は「1か所に1つ」より、複数箇所に分散して置く発想(倒れても全部失わない)
- トイレ周りに、回収の袋や拭き取り用品をまとめておく(帰宅後の処理がラクになる)
- 断水が長引く想定がある時期(台風前など)は、余裕を持った準備に切り替える
室温:留守番の最大リスクは“暑さ・寒さ”
留守番中に災害が起きると、室温管理ができなくなります。特に、窓が割れる・雨が吹き込む・冷暖房が止まるなどが重なると影響が大きくなります。
事前にできる設定(夏)
- 風通しが確保でき、直射日光の少ない場所に待機場所を作る
- 部屋の中で一番暑くなる場所(西日、最上階の窓際など)を避ける
- 物が倒れて通気が塞がれないよう、床の物を減らす
事前にできる設定(冬)
- 冷気がたまりやすい場所や、窓の近くを避けて待機場所を作る
- ケージ内で体温を保てるよう、敷くものを準備する(逃げ場も残す)
- 暖房器具に頼りすぎず、断熱で“守る空間”を小さくする発想を持つ
脱走:留守中ほど「一瞬の隙」が生まれる
留守番中は、飼い主が出入りしないぶん安全に思えますが、災害時は別です。窓や網戸の破損、ドアの歪み、ベランダの物の散乱などで、意図せず脱走ルートができることがあります。
事前にできる設定
- 玄関・窓・網戸の状態を点検し、緩みや外れやすさを減らす
- 猫は特に、ベランダへの出入りは「災害が起きたら危険が増える」前提で考える
- 留守番中に大きな音がすると逃げ場を探すので、隙間に入り込みすぎない環境を作る(冷蔵庫裏など)
ケガ・誤飲:散乱が長引くほど事故が増える
地震などで物が落ちて散乱したまま留守が続くと、犬猫はストレスや空腹で普段より口に入れやすくなったり、破片を踏んだりします。
事前にできる設定
- 落下しやすい小物(薬、電池、紐、輪ゴムなど)を床に落ちない収納へ移す
- ガラスや陶器など割れ物は、低い位置・奥へ寄せる
- 部屋の“安全地帯”を1つ作る(落下物が少ない、通路が確保できる)
「置き餌」「置き水」の考え方:やりすぎないのが安全
留守番対策として、フードや水を大量に置く発想は分かりやすい一方で、やり方によっては逆効果になることがあります。大事なのは「量」ではなく「事故が起きにくい置き方」です。
置き水の工夫
- 1つの容器に頼らず、小分けで複数にする(倒れてゼロを避ける)
- 倒れにくい位置、踏まれにくい位置に置く(通路ど真ん中は避ける)
- 猫はひっくり返しやすい子もいるので、安定性を優先する
置き餌の注意
- いつもと違うやり方にすると、食べない・食べすぎるなどが起きることがある
- 食べ物の置きっぱなしは、季節や環境で衛生面の問題が出ることもある
- 「最低限の量を確保しつつ、散乱しない形」を優先する
※「これが正解」と断定できるものではないので、普段の食習慣や体質に合わせて“試してから採用”が安全です。
連絡先カード:スマホが使えない時の“紙の保険”
留守番中の災害では、あなたが帰宅できない可能性があります。その時に備えて、第三者が見て動ける情報を紙に残すのは有効です。
置いておく情報(例)
- 飼い主の連絡先(複数手段があると安心)
- 緊急連絡先(預け先候補A・B)
- ペット情報(犬/猫、名前、性格、苦手、キャリーの場所)
- フードやトイレの簡単な手順(量や置き場所のメモ)
- かかりつけ(必要なら)と、異常時は相談する方針
置き場所は、冷蔵庫や玄関内側など「人が見つけやすいところ」が現実的です。
やりすぎ・危険な例(注意喚起)
「留守番が心配」だからこそ、次のような対策は避けます。
- 室内で火器を使う前提の対策(留守中は特に危険)
- 倒れそうな場所に物資を山積みする(落下・誤飲・通路塞ぎ)
- 紐やコードを出したままにする(絡まり・誤飲)
- 避難用に玄関へ集めすぎて、室内の動線が悪化する(犬猫が走って転倒しやすい)
この章の小さなゴール(今日できること)
留守番対策は、完璧よりも「帰れない前提の安全化」が強いです。
- 水を1か所から複数箇所へ分散する
- 落ちる・割れる・誤飲する物を、床から1つ減らす
- 連絡先カードを“1枚”作って、見える場所に置く
次の章では、発災直後から避難までを「飼い主の安全→ペット確保→持ち出し→避難判断」の順で、犬猫別のコツと分岐つきで整理します。
第6章:発災直後〜避難までの行動手順

迷ったら「自分の安全→ペット確保→持ち出し→避難判断」の順
災害が起きた直後は、情報が混乱しやすく、犬や猫も落ち着かなくなりがちです。ここで大事なのは、素早さよりも 順番を固定して迷いを減らすことです。
この章では、災害の種類が違っても使えるように、行動を次の4ステップで整理します。
- 飼い主の安全確保
- ペットの確保(脱走・ケガ防止)
- 持ち出し(最優先→次点)
- 避難判断(避難所に行く/在宅避難)
「全部を同時にやろう」とするとパニックが増えます。順にやるだけで、結果的に安全側に寄せやすくなります。
ステップ1:飼い主の安全確保(最優先)
ペットを守るためにも、まずあなたが動ける状態でいることが必要です。
- 揺れが強い間は、落下物から身を守る(頭部の保護、ガラスから離れる)
- 火災やガス臭など、差し迫った危険がないか確認する
- 足元の破片が多い場合は、無理に歩き回らず安全な範囲から動く
ここでのポイントは「落ち着いて行動できる状態を作る」ことです。あなたがケガをすると、ペットの確保が難しくなります。
ステップ2:ペットの確保(脱走・ケガを防ぐ)
次に、ペットを“安全にコントロールできる状態”にします。
確保の目的は 安心させることより先に、脱走させない・ケガを増やさないことです。
犬の確保のコツ
- まずは落ち着いた声で名前を呼び、急に追いかけない
- 首輪が外れやすい場合は、状況が落ち着いたタイミングで確認する
- リードを付けられるなら付ける(室内でも“逃走防止”として有効な場面があります)
- 興奮して噛みそう・暴れそうなら、無理に押さえ込まず、いったん距離と安全を優先する
犬は「飼い主の動き」に反応しやすいので、飼い主が慌てるほど犬も落ち着きにくくなります。
猫の確保のコツ
- 猫は驚くと隠れます。追いかけるほど奥へ行きやすいので、まずは動きを止める
- 玄関・窓・ベランダなど脱走しやすい場所は、可能なら先に閉めておく
- 隠れた場合は、家の中の「よく隠れる場所」から探し、無理に引っ張り出さない
- タオルなどで包むと落ち着く子もいますが、暴れる場合は無理をせず安全を優先する
猫は“捕まえる手順”があるだけで、避難判断が止まりにくくなります。
ステップ3:持ち出し(最優先→次点)を短時間でまとめる
持ち出しは、事前に「優先順位」を決めておくほど迷いません。発災直後は、全部を完璧に持つより、最優先だけ確実にが安全です。
最優先(まず確保するもの)
- ペット本体の確保手段(犬:リード等/猫:キャリーが特に重要)
- 水(最低限)
- 迷子・脱走対策につながるもの(連絡がつく状態を作る発想)
- 常備薬が必要な子は、無理のない範囲で
次点(余裕があれば)
- フード(小分け)
- トイレ用品(最低限の回収・密閉ができるもの)
- 衛生用品(拭く、隔離する)
ここは「何を持つか」より「何から持つか」の順番が大事です。
ステップ4:避難判断(避難所に行く/在宅避難)を分岐で決める
避難は「行けば安全」「家にいれば安全」と単純ではありません。
だからこそ、状況別の分岐を用意しておくと迷いが減ります。
A:避難所に行く判断材料
次のような状況では、避難所や安全な場所への移動を検討する価値が上がります。
- 浸水・土砂・火災など、場所そのものが危険
- 建物の損傷が大きい、ガラス破損が多い
- 余震や強風で、室内の安全確保が難しい
- 室温が保てない(停電が長引く見込み/猛暑・厳冬)
- 水・トイレ・生活が回らない見通しが強い
避難所に向かうなら、犬猫ともに「確保・移動の安全」を優先します。無理に荷物を増やして移動が危険になるなら、最優先だけで動くほうが安全な場合もあります。
B:在宅避難を選びやすい判断材料
次の条件が揃うなら、在宅避難(家に留まる)を選びやすいことがあります。
- 建物の損傷が少なく、危険が切迫していない
- 室内の危険(倒れ物・破片)を一定レベルで減らせている
- 水・フード・トイレなど最低限が確保できる
- 近隣の状況が安定しており、避難がかえって危険になりそう
在宅避難は「無理に外へ出ない」ことで安全が増える場面もあります。ただし、状況が変化したら移動できるように、キャリーや最優先セットは“すぐ持てる状態”にしておきます。
パニック対策:犬猫を落ち着かせるための“やること”を固定する
発災直後は、犬猫が落ち着かないのは自然な反応です。大事なのは「落ち着かせようとして行動が増えすぎない」ことです。
共通のコツ
- まずは飼い主が深呼吸し、声を低くゆっくりにする
- 追いかけない(犬猫ともに逃げ・興奮が強くなる)
- ペットを確保できたら、いったん安全な場所で待機させる(ケージ/キャリー/落下物が少ない部屋)
キャリーへ誘導するコツ
- キャリーは“捕まえて入れる”より、“誘導して入ってもらう”ほうが安全なことが多い
- 扉を全開にし、静かに近づける
- 猫は特に、無理やり押し込むほど次回が難しくなることがあるため、可能なら落ち着く時間を作る
※緊急時は理想通りにいかないこともあります。危険が迫っている場合は、まず安全確保を優先します。
この章の小さなゴール(あとで迷わないために)
この章は、読んだ後に“手順を短くメモできる”ことが目的です。たとえば次の一行をスマホメモにしておくだけでも役立ちます。
- 自分の安全→確保→持ち出し→避難判断
次の章では、避難所・車中・知人宅など「避難先で困りやすいこと」を、マナーとトラブル予防の視点で具体化します。
第7章:避難所・車中・知人宅で困ることと対策

避難先で大事なのは「ペットの快適さ」より“トラブルを増やさない工夫”
避難先(避難所・車中・知人宅)では、犬猫にとって環境が一気に変わります。同時に、周囲の人も不安や疲れがたまっているため、ちょっとしたことでトラブルになりやすいのが現実です。
ここでの目的は、犬猫を完璧に快適にすることではなく、まずは 安全を守り、周囲との摩擦を減らし、生活を回すことです。
「最低限のマナー」と「トラブル予防」を中心に、困りやすい点と対策を整理します。
鳴き声・物音:周囲配慮が必要になりやすい
避難先では、人も動物も落ち着きにくい環境です。犬は吠えやすく、猫も不安で鳴くことがあります。
対策の考え方
- まずは 犬猫を落ち着かせるより“刺激を減らす” を優先する
- 人の出入りが多い場所・通路沿いは、可能なら避ける
- 犬は声かけや触れ方が逆に興奮を上げることもあるので、反応を見ながら落ち着いた対応に寄せる
できる工夫
- キャリーやケージに布をかけて視界を減らす(熱がこもらないよう注意しつつ)
- いつも使っているタオルや毛布など、においが落ち着く物を入れる発想
- 犬は「合図」よりも、まず“静かに待てる場所”を確保する
トイレ:避難先のルールと衛生の両方が課題
避難所では、ペット用トイレの扱いが場所ごとに違います。車中や知人宅でも、においや処理で気を遣います。
対策の考え方
- 「排泄させる」より「処理して臭いを広げない」 が優先になる場面がある
- ルールがある場合は、まず確認して従う(トラブル予防)
- うまくできない時ほど、無理に叱らない(ストレスが増える)
犬のトイレ
- 室内・車中での排泄は、普段と違って失敗しやすい
- シート等を使う場合は、周囲に漏れない敷き方を意識する
- 回収と密閉ができると、においと衛生面のトラブルが減りやすい
猫のトイレ
- 猫は環境変化で我慢しやすいので、静かな場所に簡易トイレを置く発想
- 砂や処理用品は、使ったら密閉して保管する(におい対策)
- トイレが不安定な時は「叱らず、落ち着ける環境の確保」を優先する
※排泄が極端に出ない/明らかに苦しそうなどの異変があれば、無理に判断せず動物病院へ相談できるようにします。
ストレス:犬猫は“耐える”ことが多いので、観察が大事
避難先では、犬猫のストレスサインが出やすいです。ただし、表に出る子もいれば、我慢して表に出ない子もいます。
よくあるサイン(例)
- 犬:落ち着かない、吠える、震える、食べない、過剰に興奮する
- 猫:隠れる、動かない、鳴く、食べない、トイレが不安定になる
対策の考え方
- 「慣れさせる」より 刺激を減らして回復できる時間を作る
- 触る・声をかけるより、静かに見守ったほうが落ち着く場合もある
- 食事や水は、無理に増やさず“いつものリズム”に近づける発想
体調:環境変化で起こりやすいことを“先に想定”する
避難先では、食事・水分・排泄・睡眠が乱れやすく、体調にも影響が出やすいです。
よく起こりやすいこと
- 食欲が落ちる
- 水を飲む量が変わる
- 下痢や便秘っぽくなる
- 落ち着かず眠れない
対策の考え方
- まずは「水が飲める」「排泄できる」環境を確保する
- 変化が大きい時ほど、急な切り替えを減らす
- 気になる症状が続く・悪化する場合は、動物病院へ相談する
周囲への配慮:避難先でのトラブルを減らす“最低限のマナー”
避難先では、動物が苦手な人やアレルギーの人もいます。ここは、犬猫のためにも「摩擦を減らす」ことが結果的に守りになります。
最低限のマナー(避難所・知人宅共通)
- 管理はキャリー/ケージ内が基本(飛び出し・接触を減らす)
- 通路や人の動線に出さない
- においと汚れを広げない(排泄物は早めに密閉)
- 許可なく他人に近づけない(噛む・引っ掻くなど事故予防)
ルールがある時の考え方
- “自分の判断”より、まず現地の運用に合わせる
- 合わない場合は、在宅避難や別の避難先など選択肢を検討する(安全が前提)
車中避難で困りやすいこと:狭さ・温度・換気
車中避難は選択肢になることがありますが、室温管理や換気が課題です。
対策の考え方
- 暑さ・寒さを“我慢で乗り切る”のは難しい場面がある
- 換気と温度のバランスを意識し、無理が出る前に別の選択肢を検討する
- 車内での排泄・においはトラブルになりやすいので、処理と密閉を重視する
※車中でぐったりする、呼吸が明らかに苦しそう等があれば、無理をせず安全側に動きます。
知人宅で困ること:相手の生活リズムとルール
知人宅は安心に見えますが、「相手の生活」もあるため、配慮が必要です。
対策の考え方
- 事前に「犬猫の待機場所」を決め、動線を限定する
- トイレの置き方、処理のやり方を確認する
- 夜間の鳴き声・におい対策を優先する
犬・猫で特に詰まりやすい点
犬:鳴き声・散歩できない・周囲との接触
犬は人や音に反応しやすく、避難先で吠えると気を遣います。散歩が難しい状況では、排泄の工夫が必要になります。
「静かに待てる環境づくり」と「排泄の処理」を優先すると、トラブル予防につながります。
猫:隠れる・キャリーから出せない・トイレの変化
猫は隠れて動かなくなることがあり、無理に出そうとするとストレスが増えます。基本はキャリー中心で管理し、静かな場所でトイレ環境を用意するのが現実的です。
この章の小さなゴール(避難先で守る優先順位)
避難先で迷いが出たら、次の順番に戻ります。
- 安全(飛び出し・接触事故を防ぐ)
- 衛生(排泄物の回収と密閉)
- 刺激を減らす(視界・音・動線)
- 水と体調の観察
次の章では、全体を5点に要約し、今日から動けるように「10分/30分/週末」の3ステップで行動計画に落とし込みます。
まとめ

重要ポイントは「方針→最低限→安全化→手順→避難先」の5つ
ここまでの内容を、マニュアルとして使えるように要点を5つにまとめます。災害の種類が違っても、まずはこの5つに戻れば迷いが減ります。
重要ポイント①:災害別より「共通して困ること」から備える
地震・台風・豪雨・停電など種類が違っても、困りごとは似ています。
水・食事・トイレ・室温・移動・脱走が“共通の柱”なので、まずここを固めるとブレません。
重要ポイント②:最初に「基本方針4つ」を仮決めしておく
準備が進まない原因は、物の不足より「方針が決まらない」ことが多いです。
同行避難の方針、在宅避難の条件、預け先/連絡網(2ルート)、持ち出し優先順位(3段階)を仮決めすると、次にやることが自動で決まります。
重要ポイント③:備えは「72時間→1週間」の順に積み上げる
いきなり完璧を目指すより、まず72時間(3日)を確保してから1週間へ広げる方が続きます。
水・フード・トイレ・キャリー(猫は最優先)・衛生・情報の順で、上から穴埋めしていけば十分役に立ちます。
重要ポイント④:家の安全対策は“平常時にしかできない最強の防災”
家具転倒・落下物・割れ物・誤飲・脱走動線を減らすだけで、在宅避難の安全度が上がり、避難時の混乱も減ります。
「玄関〜避難動線」「割れ物」「床の危険物」から1つずつでOKです。
重要ポイント⑤:発災直後は「順番固定」でパニックを減らす
迷った時はこの順番に戻ります。
- 飼い主の安全 → ペット確保 → 持ち出し → 避難判断
避難先では、快適さよりも「事故とトラブルを増やさない」工夫(管理・衛生・刺激を減らす)が効きます。
今日やるべき行動:3ステップ(10分/30分/週末)
「今すぐ全部は無理」でも大丈夫です。行動は小さく分けるほど続きます。ここでは、今日から始められる最短ルートを3段階で提示します。
① 10分でやる(“迷いを減らす”)
- スマホメモに1行だけ書く:自分の安全→確保→持ち出し→避難判断
- 同行避難/在宅避難の方針を「仮決め」する(迷ったら仮でOK)
- 預け先・連絡先を2人(または2ルート)だけ候補として書き出す
② 30分でやる(“最低限セットの形”を作る)
- 水とフードの「最低ライン」を決め、ひとまとめにする(出しやすい場所へ)
- トイレの回収(袋など)を一緒に置いて“処理できる形”にする
- キャリー(猫は特に)を「すぐ使える場所」に固定する
③ 週末にやる(“留守番と家の安全化”を進める)
- 玄関〜部屋までの動線から、つまずく物・落ちやすい物を減らす
- 玄関・窓・ベランダの脱走ルートを点検し、1つ潰す
- 留守番中の停電・断水を想定して、水の置き方を分散する(倒れてゼロを避ける)
- 連絡先カード(紙)を1枚作り、見える場所に置く
最後に:マニュアルは「一度作って、少しずつ更新」で十分
ペット防災は、完璧に揃えてから安心するものではなく、最低限を作って、更新し続けるほうが現実的です。
今日の10分だけでも進めておくと、次に迷った時の“戻る場所”ができます。
次の章では、この記事の内容をそのまま使える形に落とし込んだ「チェックリスト(コピー用)」を用意します。
チェックリスト(別枠・コピー用)
一人暮らし向け|ペット防災チェックリスト(犬猫共通+犬だけ+猫だけ)
このチェックリストは「完璧に揃える」ためではなく、優先順位どおりに穴埋めするためのものです。
まずは「今日」だけでもOK。できた項目にチェックを入れていく使い方を想定しています。
今日(10分〜30分でできる)
□ 犬猫共通
- □ 発災直後の行動順をメモした(自分の安全→確保→持ち出し→避難判断)
- □ 同行避難を基本にするか仮決めした(例外として在宅避難の条件もメモ)
- □ 在宅避難にする条件/避難する条件を1行で書いた
- □ 緊急連絡先を2ルート書き出した(家族・友人・同僚など)
- □ ペットの情報メモを作り始めた(名前・性格・苦手・フード量など)
- □ 水を「1か所だけ」にせず、複数箇所に分けて置く想定にした
- □ フードを小分けできる状態にした(袋や容器に分ける想定)
- □ 排泄物を回収・密閉できる袋を「トイレの近く」に置いた
- □ キャリー(またはケージ)の置き場所を固定した(すぐ出せる場所)
□ 犬だけ
- □ リード(必要なら首輪も)を「すぐ掴める場所」に置いた
- □ 室内排泄の手段を確認した(災害時に使える形か)
- □ 吠えやすい状況を想定し、落ち着ける待機場所を決めた
□ 猫だけ
- □ キャリーを出しっぱなし/すぐ出せる場所に固定した
- □ 玄関・窓・ベランダの脱走しやすい場所を意識して確認した
- □ 隠れやすい場所を把握し、奥に入りすぎる隙間を1つ見つけた
今週(1〜2時間で整える)
□ 犬猫共通
- □ 持ち出し優先順位を3段階でメモした(最優先/次点/余裕があれば)
- □ 最優先セットを1つにまとめた(取り出しやすい場所に)
- □ 水・フード・トイレの「72時間分」を確保する目安を決めた(量は家庭で調整)
- □ トイレ用品に「処理と密閉」の手段をセットにした(においを広げない)
- □ 衛生用品(拭く物・汚れ隔離)をまとめた
- □ 室温対策(暑さ/寒さ)を“電気なしでもできる工夫”として考えた
- □ 連絡先カード(紙)を作って、見える場所に置いた
- □ ハザードマップや避難情報の確認方法を決めた(見る順番を固定)
- □ 玄関〜部屋の通路から、つまずく物を減らした
- □ 割れ物(ガラス・陶器)を奥や安全な位置へ移した
□ 犬だけ
- □ 室内排泄(シート等)を非常時でも使えるように配置を決めた
- □ キャリー/クレートで落ち着けるか、短時間でも試した
- □ 避難時に抱えて移動できるか(階段など)を一度想定した
□ 猫だけ
- □ 猫が逃げ込みやすい場所(冷蔵庫裏など)を点検し、塞げる所を塞いだ
- □ キャリーの扉・持ち手などを点検し、すぐ使えるか確認した
- □ 簡易トイレ(小さい容器等)として転用できる物を決めた
今月(週末に少しずつ強化する)
□ 犬猫共通
- □ 1週間分へ備えを増やす計画を立てた(分割でOK)
- □ 在宅避難の安全度を上げる(家具転倒・落下物・ガラスの対策を進めた)
- □ 留守番中の災害を想定し、水の置き方を分散し直した(倒れてゼロを避ける)
- □ 停電時に危険が増える場所(窓際・落下物が多い場所)を避けて待機場所を調整した
- □ 避難動線を実際に歩き、キャリーを持って通れるか確認した
- □ 避難先(避難所/車中/知人宅)で困ることを想定し、最低限のマナーを整理した
- □ ペットの情報メモを更新した(性格・苦手・落ち着く物・注意点)
- □ 預け先候補A・Bに、非常時の連絡方法や鍵の手順を相談できる形にした(相談の段取りをメモ)
□ 犬だけ
- □ 避難先での排泄・におい対策を想定し、処理手順を決めた
- □ 落ち着ける待機方法(クレート等)を普段から短時間練習する計画を立てた
□ 猫だけ
- □ 脱走ルート(玄関・窓・ベランダ)の弱点を見直し、追加で対策した
- □ “捕まえる手順”を自分用に短くメモした(追いかけない/出口を閉じる等)
- □ キャリーへの誘導を想定し、置き場所や出し方を再調整した
使い方メモ(チェックが進まない時のコツ)
- □ まず「今日」の犬猫共通だけ埋める(10分でOK)
- □ 次に「水・フード・トイレ・キャリー」の4点だけを今週で固める
- □ それ以外は“1エリアずつ”安全化する(玄関→通路→寝る場所の順)



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