災害は、起きる「その瞬間」よりも、起きる前の準備で差がつきやすいものです。犬や猫がいると、人だけの防災より考えることが増えます。キャリーやフードをそろえたのに、避難所の受け入れ条件や連絡の取り方が曖昧なまま、というケースも少なくありません。
「何を買うか」だけで備えようとすると、どうしても物品に偏りやすく、行動・連絡・ルール確認が抜けがちです。災害時は情報が混乱し、落ち着いて調べたり、家族と相談したりする余裕が減ります。だからこそ平時に、優先順位をつけて“整える”ことが大切になります。
このガイドでは、犬猫の飼い主が災害前に整えておきたい準備を、やる順番が分かる形でまとめます。ポイントは次の3つです。
- 命と迷子を防ぐ準備を最優先にする(身元確認・逸走対策・キャリー慣れなど)
- 避難の判断材料を先に固める(ハザードマップ、避難先、同行避難ルールの確認)
- 家族で共有できる形にして、当日迷わない(紙+スマホで残す)
完璧を目指すより、「不足を減らす」「順番を間違えない」ことが現実的です。今日できることから埋めていけば、災害が来る前に“迷わない状態”に近づけます。
次の内容
災害前に整えるべきことを7つに要約し、全体像を一気に把握できる形で整理する。
まず押さえたい:災害前に整えておきたい7つの準備

災害前にやることは多く見えますが、犬猫の防災は「守りたいリスク」を先に整理すると、準備の順番が見えやすくなります。特に抜けやすいのは、物品よりも迷子対策・避難判断・家族共有です。土台を先に固めておくと、備蓄やグッズ選びも迷いにくくなります。
身元確認(迷子対策の核)を整える
災害時はドアの開閉やパニックで逸走が起きやすく、首輪が外れたり連絡先が不明だったりすると再会が難しくなります。迷子対策は「準備しても無駄になりにくい」優先度の高い土台です。
逸走・脱走を減らす家の工夫をする
玄関・窓・ベランダ・網戸など、犬猫が飛び出しやすい場所の“いつもの弱点”をつぶします。避難より前に、家の中で起きる脱走リスクを下げておくと、初動が安定します。
キャリー/クレートに慣らしておく
同行避難や移動は、キャリーに入れるところから始まります。慣れていないと捕まえるだけで時間がかかり、猫は強いストレス反応が出ることもあります。平時の慣らしが大きな差になります。
避難の判断材料(ハザードマップ・避難先)を固める
「いつ避難するか」「どこへ行くか」を決める材料がないと、当日迷って動けません。自宅周辺の災害リスクと避難先候補をセットで確認しておくのが基本です。
同行避難のルール・受け入れ条件を確認する
避難所は「ペット可」と書かれていても、飼養場所、頭数、ケージ条件、ワクチン証明の要否などが異なります。受け入れ条件の確認は、物品準備と同じくらい重要です。
生活を回すための最低ライン(水・フード・トイレ・衛生)を用意する
備蓄は量より「続け方」が重要です。普段使いしながら回す方法、代替手段、衛生を崩したときのリカバリーまで考えると不足が見えやすくなります。
停電・断水・情報途絶への備え+家族共有を完成させる
暑さ寒さ対策、予備電源、情報の取り方(防災アプリ・防災メール・自治体情報のブックマーク)を整え、最後に家族で役割分担まで決めます。ここまで揃うと「当日やること」が減ります。
次の内容
最優先の「命と迷子を防ぐ準備」を具体化し、身元確認・逸走対策・キャリー慣れの整え方を順番にまとめる。
最優先:命と迷子を防ぐ準備(身元確認・逸走対策・キャリー慣れ)

災害前の準備で、いちばん後悔が起きにくいのは「命を守ること」と「迷子を防ぐこと」を先に固めることです。物が揃っていても、逃げてしまったり、移動できなかったりすると次の行動が止まります。ここでは 身元確認 → 逸走対策 → キャリー慣れ の順で整えると迷いが減ります。
身元確認を“二重化”する(首輪+体内/持ち物)
迷子対策は「1つだけ」だと、外れたり壊れたりしたときに弱くなります。複数の手段を重ねておくと、発見されたときに連絡がつながりやすくなります。
- 首輪・ハーネスに連絡先をつける
迷子札や連絡先タグは、見つけた人がすぐ行動できる形が強みです。文字が消えない素材、電話番号の更新忘れが起きにくい方法が安心です。 - 鑑札・注射済票などの情報を整理する(犬)
いざという時に提示が必要になる可能性があるため、番号や保管場所を家族で共有しておくと混乱が減ります。 - 登録情報・写真を用意しておく(犬猫共通)
全身写真に加えて、顔のアップ、柄や傷など“見分けポイント”が分かる写真を複数残すと、捜索や照合がしやすくなります。 - 持ち出し袋にも身元情報を入れる
迷子札だけでなく、連絡先メモや写真のコピーがあると、首輪が外れた場合の補助になります。
逸走・脱走を減らす「家の弱点つぶし」(玄関・窓・網戸)
災害時は、揺れや音に驚いて走り出す、避難準備でドアを開け閉めする、人の出入りが増える、といった要因が重なります。日常の家の構造に合わせて、逃げ道を減らす工夫が現実的です。
- 玄関まわりの二重対策
玄関を開けた瞬間に飛び出すのを防ぐため、室内側に“もう一枚の境界”を作る発想が有効です。ベビーゲート、簡易フェンス、突っ張り柵などで「人が出入りしてもペットが直接玄関に行けない」状態を目指します。 - 窓・ベランダ・網戸の確認
網戸は衝撃で外れたり、ロックが甘いと開きやすかったりします。猫は隙間から抜けることがあるため、網戸ストッパーや補助ロックなどで“勝手に開かない”状態にしておくと安心です。 - 猫の隠れ場所/犬の待機場所を決める
揺れたときに飛び回るより、落ち着ける場所がある方が安全につながります。猫はキャリーを置いた静かな部屋、犬はクレートや定位置のマットなど、落ち着く場所を普段から固定しておくと行動が安定しやすいです。
キャリー/クレートに「入れる」ではなく「入っても平気」にする
同行避難や移動は、キャリーに入れられるかどうかで難易度が変わります。嫌な経験として記憶されると、次に入れるのがさらに大変になるため、平時から“嫌がりにくい流れ”を作っておく方がスムーズです。
- 出しっぱなしにして、普段の居場所にする
しまい込まずに置いておくと、「見慣れた物」になりやすいです。中にタオルや毛布を敷き、落ち着く匂いを残します。 - 短いステップで慣らす
「近づく→中に入る→扉を閉める→少し持ち上げる→短時間移動」のように段階を分けると、拒否反応が出にくくなります。 - 猫は“捕まえる練習”が必要になることがある
災害時は急いでいるほど猫が逃げ回りやすいです。洗濯ネットやタオルで包む方法を知っておくと、負担を減らしやすい場面があります。 - 犬はハーネス・リードの装着をセットで練習
キャリーに入る前後の移動でリードが必要になる場面が多いため、装着を嫌がりにくい流れを日常に組み込みます。
迷子対策の“最後のひと押し”:今の連絡先で家族が再現できるか
防災は「知っている」だけだと当日に抜けやすいです。連絡先、写真、鑑札情報、保管場所などが、家族の誰でも同じように取り出せる状態かを確認しておくと、実際に役立ちやすくなります。
次の内容
避難の判断材料を整えるために、ハザードマップの見方、避難先の候補、同行避難のルール・受け入れ条件の確認手順を具体化する。
次に優先:避難の判断材料を整える(ハザードマップ・避難先・同行避難ルール)

迷子対策と移動の準備が整ったら、次は「いつ・どこへ・どう避難するか」を迷わない状態に近づけます。災害時は情報が錯綜しやすく、現地に着いてから受け入れ条件でつまずくこともあります。平時に判断材料を揃えておくと、当日の選択肢が増えます。
ハザードマップで「自宅の弱点」と「避難の方向」を把握する
ハザードマップは、災害の種類によって見るべきポイントが変わります。地震の揺れそのものは地図で分かりにくい一方、津波・洪水・土砂災害は地図で危険度の目安が見えます。
- 洪水・浸水の想定
浸水の深さが想定される地域では、避難のタイミングが遅れると移動が難しくなる可能性があります。犬猫は抱えたりキャリーで運んだりするため、人より移動に時間がかかりやすい点が判断材料になります。 - 土砂災害の警戒区域
斜面や崖が近い場合、短時間の豪雨でも影響が出る可能性があります。避難先を「高い場所」だけで選ぶと、土砂リスクが残ることもあるため、地図の表示を見比べると整理しやすいです。 - 津波の想定(沿岸部)
津波の想定がある地域では、避難先候補を「高台」「津波避難ビル」など複数持っておくと迷いが減ります。犬猫の同行避難を考えると、入口までの距離や階段の有無も現実的な条件になります。
地図を見たうえで、避難は「危険から離れる」ことが目的なので、避難先の方向(高い側/川から離れる側/斜面から離れる側)を決めておくと行動が早くなります。
避難先を「3つの候補」に分けて考える(近い・確実・代替)
避難先は1つに決め打ちすると、混雑や受け入れ条件で詰まる可能性があります。犬猫がいる前提では、次のように候補を分けると現実的です。
- 候補A:最寄りの指定避難所(一次避難の候補)
近いことが強みですが、ペットの受け入れ条件や飼養場所の運用が自治体・避難所で異なる場合があります。 - 候補B:別の指定避難所/広域避難先(混雑時の候補)
近所の避難所が満員、ルールが合わない、駐車が難しいなどのケースを想定して、もう一つ候補を持つと安心です。 - 候補C:知人宅・親族宅・宿泊施設など(代替の候補)
避難所以外の選択肢が取れると、ペットのストレスや衛生面の管理がしやすいことがあります。移動距離が伸びる可能性があるため、道路状況が悪い場合を含めて検討します。
犬猫は「キャリーで安全に運べる」「トイレを回せる」「落ち着ける場所がある」などの条件が関わるため、候補ごとにメリット・難点をメモしておくと判断がしやすくなります。
同行避難の「受け入れ条件」と「飼養場所」を具体的に確認する
同行避難は「一緒に避難所の生活空間で過ごせる」という意味ではなく、避難所の運用上は分けて管理されることがあります。確認したいのは、ざっくり次の3点です。
- 受け入れ条件(例:頭数、サイズ、キャリー必須、ワクチン等)
避難所によっては、キャリーやケージの条件、狂犬病予防注射やワクチン接種の情報提示が求められる場合があります。条件が厳しいほど、平時の準備(書類整理・装備)と関係が深くなります。 - 飼養場所(どこで過ごすか)
室内の別室、屋外の指定場所、車中避難の扱いなど、場所が変わると必要物品も変わります。暑さ寒さや騒音など、犬猫の負担が増える可能性がある点も判断材料です。 - 運用ルール(散歩・排泄・鳴き声・清掃・当番など)
周囲とのトラブルを避けるために、排泄の処理方法や清掃のルール、犬の鳴き声対策などの運用が決まっていることがあります。ルールが分かっていると「持ち物の優先順位」も立てやすくなります。
確認先は、自治体の防災ページ、避難所一覧、地域の防災メールや防災アプリの案内などが入り口になります。見つけた情報は、後で見返せるようにスマホのブックマークやメモに残しておくと役立ちます。
「避難のタイミング」を家族で言葉にして揃える
災害前の準備が進んでも、当日に「避難する/しない」で意見が割れると動きが遅れます。犬猫がいる場合、準備や移動に時間がかかる可能性があるため、判断基準を簡単に揃えておくと迷いが減ります。
- 警戒レベルや避難情報をどう扱うか
自治体の避難情報を“行動のきっかけ”として扱うのか、現地の状況(雨量、川の水位、揺れの継続など)を重視するのかを家族で共有します。 - 在宅避難に切り替える条件
建物の安全が保てる場合でも、停電や断水が長引くと犬猫の生活が回りにくくなることがあります。何を目安に「外へ出る」か「家に留まる」かを、ざっくり決めておくと判断が揃いやすいです。 - 役割分担(人・犬猫・荷物)
誰が犬猫を確保し、誰がキャリーや持ち出し袋を持つか、連絡は誰が担当するかを決めておくと、玄関での混乱が減ります。
完璧な基準を作るより、「この条件なら動く」「ここまでなら家で耐える」という形で、家族が同じ言葉で説明できる状態に近づけることが現実的です。
次の内容
水・フード・トイレ・衛生を「何日分」だけで終わらせず、代替手段と回し方まで含めて整理する。
生活維持:水・フード・トイレ・衛生(何日分/代替手段の考え方)

避難先がどこでも、在宅避難になっても、犬猫の生活は「食べる・飲む・排泄する・清潔を保つ」が回らないと崩れやすくなります。ここで大事なのは、日数の目安だけでなく、続け方(回し方)と代替手段を一緒に用意することです。どれかが不足しても、別の手段でつなげる状態を目指します。
水:日数より「確実に飲ませられる形」を先に作る
水は最優先です。ただし、量を増やすだけだと「器が洗えない」「こぼす」「飲まない」などの問題が出ます。平時から使える形で整えると、無駄が減ります。
- 目安を決めつつ、飲ませ方を固定する
普段使っている器・給水ボトル・シリンジなど、犬猫が飲みやすい手段を中心にします。器が洗えない状況に備えて、紙コップや使い捨て皿で代用できるようにしておくと管理が楽です。 - 断水を想定して「洗い物を減らす」
食器の洗浄が難しいと衛生が落ちます。使い捨てを混ぜる、ウェットティッシュで拭ける形にするなど、生活を回す前提で考えると不足が見えやすいです。 - 飲まない子への対策を持つ
環境変化で飲水量が落ちることがあります。ウェットフードやふやかし、スープ状にするなど、水分を取りやすい方法を“候補”として用意します。
フード:非常時に切り替えない(普段から回す)
非常食を別に用意しても、急に切り替えると食べない・下痢をするなどのリスクがあります。普段食べているものを中心に回すと、体調面のブレが減ります。
- ローリングストックで「古くしない」
いつも食べているフードを少し多めに持ち、古いものから使って買い足す方式だと管理が続きやすいです。 - 小分けの用意で「配りやすくする」
大袋だけだと湿気・破損・保管が不安になります。ジッパー袋で数日分ずつ小分けにしておくと、避難時も扱いやすいです。 - 食欲が落ちたときの“つなぎ”を決める
いつもと違う場所では食べ渋りが出ることがあります。トッピング候補(いつものウェット、少量のふりかけ等)を決めておくと、当日の試行錯誤が減ります。
トイレ:量だけでなく「捨て方・臭い・代用品」をセットにする
トイレは、物があっても運用が詰まると続きません。特に猫は環境変化で排泄を我慢しやすく、犬は散歩ができない状況が起きます。臭いと処理まで含めて整えると安心です。
- 猫:いつもの砂に近いものを中心にする
砂が変わると使わないことがあります。普段の砂をベースに、軽量タイプや固まり方の違いなどを試して“使える候補”を作っておくと切り替えが楽です。 - 犬:散歩に出られない前提も持つ
豪雨や余震、危険物の散乱などで外に出にくいことがあります。室内で排泄できる子はシーツを、難しい子は短時間で安全に出す方法(ルート・時間帯)を家族で共有しておくと混乱が減ります。 - 処理用品は多めに見積もる
砂やシーツ本体より、ゴミ袋、消臭袋、手袋、拭き取り用品が不足しやすいです。廃棄場所が確保できない状況もあるため、密閉できる袋を中心にすると運用しやすいです。
衛生:清潔が崩れると体調トラブルが増えやすい
衛生は後回しにされがちですが、皮膚トラブルや下痢、ストレスの増加につながることがあります。水が使えない状況でも“最低限”を回せる道具があると安心です。
- 拭き取りで代用できるセットを作る
体拭きシート、ウェットティッシュ、ペット用の清拭用品など、水がなくても清潔を保てるものを用意します。 - 足まわり・口まわり・排泄後のケアを優先する
全身を完璧にするより、汚れやすい部分を重点的にケアできると負担が減ります。 - 環境の汚れを減らす工夫
使い捨てシートを敷く、タオルを多めに用意するなど、掃除の手間を減らす発想が役立ちます。
「何日分」に迷ったときの考え方
日数は地域や災害規模で変わるため、ひとつの数字に決め切るより、段階で考えると整理しやすいです。
- まずは短期間を“確実に回せる”形にする(水・フード・トイレ・衛生が破綻しない)
- 次に延長を“保管と運用”で無理なく増やす(置き場所、消費期限、廃棄、持ち出しの重さ)
- 最後に不足しやすい消耗品を補強する(袋、拭き取り、消臭、手袋など)
「量を増やしたのに、やり方が詰まって使えない」を避けるために、普段の生活の延長で回せる形を優先すると失敗が減ります。
停電・断水:暑さ寒さ・電源・情報

停電や断水は、犬猫の生活をじわじわ難しくします。照明がない不便さより先に影響が出やすいのは、体温調整・飲水と衛生・情報不足です。ここでは「全部そろえる」より、まず困りやすい順に整える考え方をまとめます。
暑さ寒さ:体温調整を最優先に考える
室温管理が崩れると、犬猫は体調を崩しやすくなります。特に高温多湿や急な冷え込みは負担が大きく、避難所や車内でも起こり得ます。
- 暑さ対策:風と日陰を確保する発想
室内では風の通り道を作る、遮光で直射日光を減らす、床に近い涼しい場所を確保するなど、「熱をためない」工夫が役立ちます。犬は短頭種や高齢、持病がある場合に暑さの負担が増えることがあり、猫も高温多湿で食欲が落ちることがあります。 - 寒さ対策:保温の“層”を作る発想
毛布やタオルを重ねる、段ボールで囲う、床からの冷えを減らすなど、熱を逃がしにくい環境を作ります。猫は狭い場所で丸まれる方が落ち着きやすいことがあるため、キャリーやクレートを活用しやすいです。 - 避難先・車内でも起きる問題として考える
風通しの悪さ、周囲の騒音、熱がこもる場所などは避難先でも発生します。屋外の指定飼養場所や車中避難になった場合を想定し、犬猫が落ち着ける配置をイメージしておくと判断が早くなります。
電源:使い道を絞るほど役に立つ
停電時の電源は、容量より「何に使うか」を決めておくと無駄が減ります。犬猫の防災では、優先度が高いのは次のような用途です。
- 情報取得(スマホの充電)
自治体の情報や家族との連絡はスマホに集まりやすいです。まずはスマホの電源を切らさないことを中心に考えます。 - 暑さ寒さの補助(小型の送風・保温)
扇風機や小型ファン、季節によっては電気毛布などを使う可能性があります。ただし、消費電力が大きいと持続しにくいので、優先順位を決めておくと現実的です。 - 照明(夜間の安全確保)
暗いと逃走やケガのリスクが上がります。足元と手元の明かりを確保できると、犬猫の確保や排泄処理がしやすくなります。
電源は「大きいほど安心」と感じやすい一方、重さや保管、充電の習慣が負担になることもあります。日常的に使える範囲で、用途を絞って備える方が継続しやすいです。
断水:飲水と衛生の“詰まりやすいところ”を先に潰す
断水時は、水そのものの量だけでなく、洗い物や排泄処理が詰まりやすくなります。生活維持の章で触れた内容を、停電・断水の現実に合わせて補強します。
- 器を洗えない前提で、使い捨てを混ぜる
使い捨て皿や紙コップで代用できると、水の消費を抑えつつ清潔を保ちやすいです。 - 排泄物の処理は“密閉”が重要になる
臭いがこもりやすく、清掃も難しくなります。密閉袋や消臭袋があると生活が回しやすいです。 - 拭き取り中心の衛生セットを用意する
体拭きシート、ウェットティッシュ、手袋など、水を使わずに汚れを処理できるものが役に立ちます。
情報:見に行く場所を固定し、迷う時間を減らす
災害時は「どこを見ればいいか」で迷いがちです。平時に情報の入口を決め、スマホに残しておくと、必要なときに探し回らずに済みます。
- 自治体の防災ページ・避難所情報をブックマーク
避難所の開設状況や注意事項は地域によって差があります。入り口を固定しておくと、判断が早くなります。 - 防災アプリ・防災メール(地域の配信)を整える
警報や避難情報を受け取りやすくなります。通知が多すぎて見落としやすい場合は、家族の中で「誰が確認するか」を決めておくと混乱が減ります。 - 停電時に見られない前提も持つ
通信が不安定な場合があります。スクリーンショットやPDF保存など、最低限の情報(避難先候補、地図、連絡先)をオフラインで見られる形にしておくと安心です。
犬猫の安全を保つ「停電時の行動」をイメージしておく
停電になると、犬猫が不安で吠える・隠れる・落ち着かないことがあります。行動を固定しておくと、家族もペットも落ち着きやすいです。
- 犬猫を先に安全な場所へ集める(クレートや決めた部屋)
- 玄関の開閉が増える前に、逸走対策を作動させる(ゲート・柵など)
- 夜間は照明を確保してから移動・排泄処理をする
細かい手順より、流れを決めておくことが当日の迷いを減らします。
健康管理:常備薬・通院情報・ストレス対策(受診を含む相談の目安)

災害前の健康管理は、「薬を多めに持つ」だけで終わりにしない方が安心です。停電や断水、環境の変化は体調に影響しやすく、避難や在宅避難のどちらでも負担になります。ここでは、情報の整理 → 常備薬・ケア用品 → ストレス対策 → 困ったときの相談の目安の順で整える考え方をまとめます。
通院情報を「家族が代わりに説明できる形」にしておく
災害時は、いつも通りの受診が難しくなったり、別の動物病院に相談する可能性が出たりします。説明に必要な情報をまとめておくと、状況が変わっても対応しやすいです。
- 基本情報(犬猫共通)
名前、年齢、性別、体重、既往歴(これまでの病気や手術)、アレルギーの有無、食事の種類(フード名)、苦手な処置など。 - 予防関連(犬猫共通)
混合ワクチンの時期、フィラリア・ノミダニ対策の状況などは、避難先や一時預かりで確認される可能性があります。 - かかりつけ情報
病院名、電話番号、診察券番号、薬局情報(該当する場合)を、紙とスマホの両方で残します。
情報は細かすぎると続かないので、「いざ説明するときに困る項目」だけに絞るのが現実的です。
常備薬・ケア用品は「切らさない仕組み」を作る
薬や療法食が必要な子は、災害時に入手が難しくなる可能性があります。量を増やすより、普段から不足しない仕組みにしておく方が管理が続きます。
- 薬は“残量が減ったら動く”基準を決める
「あと何日分になったら相談するか」を決めておくと、ギリギリで慌てにくくなります。 - 処方内容が分かる情報を残す
薬の名前、用量、投与回数が分かるメモや写真があると、万一のときに説明しやすいです。 - ケア用品は“用途”でまとめる
目や皮膚のケア、消化器ケア(下痢・嘔吐が出やすい子)、口腔ケアなど、普段から使うものを中心にし、使い方が家族に共有されているかを確認します。
ストレス対策:環境変化で起きやすい不調を減らす
災害時は音、匂い、暗さ、人の気配、生活リズムの乱れなどが重なります。ストレスは食欲不振や下痢、粗相、過剰な吠え・隠れなどにつながることがあります。
- 安心できる“いつもの匂い”を持ち出せるようにする
使い慣れたタオルや毛布は、避難先でも落ち着きやすい要素になります。 - 犬は“できる範囲でルーティンを残す”
食事の時間や声かけなど、普段の流れを少しでも残せると落ち着きやすいことがあります。 - 猫は“隠れられる場所”を確保する
周囲が騒がしい環境では、隠れられる空間がある方が落ち着きやすいです。キャリーに布をかける、視界を遮るなど、負担を減らす工夫が役立ちます。 - 排泄の乱れに備える
猫はトイレ環境が変わると我慢しがちで、犬は散歩が難しいと排泄が乱れやすいです。トイレの選択肢を増やし、失敗したときの片付け用品もセットにしておくと安心です。
受診を含む相談の目安:迷ったときの判断材料
災害時は「様子を見ていいのか」が分かりにくくなります。断定ではなく、判断材料として目安を持っておくと迷いが減ります。
- 元気や食欲が落ちた状態が続く
いつもより明らかに動かない、食べない、飲まない状態が続く場合は、環境変化だけでなく体調不良の可能性もあります。 - 呼吸が苦しそう/いつもと違う様子が強い
暑さ寒さ、興奮、持病の悪化などが関係している可能性があります。室温調整を行っても改善しない場合は相談が必要になることがあります。 - 嘔吐や下痢が繰り返される/血が混じるように見える
食事の変化、ストレス、感染症など原因が幅広く、脱水が進む可能性もあります。水分が取れない、回数が多い場合は相談の優先度が上がります。 - 排尿・排便が出ない、痛がる、ぐったりする
緊急性が高い可能性があるため、早めに専門家へ相談する判断材料になります。
相談先が限られる状況も想定し、かかりつけの連絡先だけでなく、地域の動物病院の候補を複数メモしておくと安心です。
情報整理を「持ち出し袋」と「スマホ」に分けて入れる
健康関連は、現物(薬)と情報(メモ)がセットで役立ちます。
- 持ち出し袋:薬・療法食・最低限のケア用品
- スマホ:診察券や処方内容の写真、既往歴メモ、病院連絡先
- 紙:停電や通信不安定でも見られる要点メモ
どれか一つに頼らず、最低限を重ねておくと安心につながります。
家族共有:紙+スマホで残すメモ(連絡先・ブックマーク・役割分担)

準備をしていても、災害当日に「どこにある?」「誰がやる?」「どの情報を見る?」で止まると動きが遅れます。犬猫がいる家庭では、ペットの確保や移動だけでも手が足りなくなりやすいので、家族共有の完成度が大きな差になります。ここでは、紙とスマホを併用して「誰でも同じ行動ができる状態」に近づける方法をまとめます。
紙+スマホの両方に残す理由
スマホは便利ですが、充電切れや通信不安定で見られない可能性があります。一方、紙だけだと外出先で確認しにくく、更新もしづらいです。両方に残しておくと、片方が使えないときの逃げ道になります。
- スマホ:素早く見返す/共有しやすい
- 紙:停電・通信不安定でも見られる/家の中で迷いにくい
家族共有メモは「1枚で全体が分かる」形にする
長い文章より、見た瞬間に判断できる形が役に立ちます。見出しは少なく、項目を固定すると迷いが減ります。
- 避難先の優先順位(候補A・B・C)
住所(または目印)、移動ルートの方向、ペットの扱い(飼養場所の想定)を短く書きます。 - 連絡先(家族・近しい人・かかりつけ)
家族の連絡先だけでなく、連絡がつかなかった場合の中継役(親族・知人)も入れると安心です。動物病院の連絡先も同じ場所にまとめます。 - 犬猫の情報(最低限)
名前、写真(紙は印刷、スマホはアルバム固定)、持病や薬の有無、アレルギーなど「説明に必要な最小限」に絞ります。 - 持ち出しの流れ(やる順番)
例:犬猫を確保→キャリー→持ち出し袋→玄関の逸走対策→出発、のように短い順番で書きます。
ブックマークは「見る場所を固定」して増やしすぎない
情報源が多いほど安心に見えますが、災害時は探す時間が増えることがあります。見る場所を少数に固定し、家族と同じ場所を見られるようにします。
- 自治体の防災ページ(避難所・開設情報・注意事項)
- ハザードマップ(地域の危険度・避難方向の確認)
- 気象・警報情報(豪雨・台風・避難情報の判断材料)
- 停電・断水など生活インフラ情報(必要に応じて)
スマホでは、ブックマークをフォルダにまとめたり、ホーム画面にショートカット化したりすると、当日の迷いが減ります。紙にはURLを書くより「ページ名」や「検索語」を短く書く方が実用的です。
役割分担は「人・犬猫・荷物・情報」で分ける
家族全員が同じことをすると、逆に抜けやすくなります。役割は細かくしすぎず、4つに分けると整理しやすいです。
- 犬猫担当:確保・キャリー・迷子対策の最終確認
- 荷物担当:持ち出し袋・水・トイレ用品など必要物の回収
- 情報担当:避難情報の確認・避難先の判断・連絡
- 家の最終確認:戸締まり・電源・ガス・逸走防止(ゲート等)
一人暮らしの場合は「順番」を決めるのが役割分担の代わりになります。最初に犬猫を安全に確保し、次に荷物、最後に家の確認という流れを固定しておくと混乱が減ります。
家族共有を“形だけ”で終わらせないチェック
作って終わりだと、当日に使えないことがあります。短い確認だけでも、実用性が上がります。
- 誰でも同じメモを開けるか(スマホの共有、紙の保管場所)
- 避難先までの方向が言えるか(迷ったらどっちへ動くか)
- 犬猫の写真がすぐ出せるか(スマホのアルバム固定)
- 連絡先が今の番号か(更新忘れがないか)
「完璧に作る」より「迷わず取り出せる」ことが目的になると、続けやすくなります。
よくあるQ&A

Q1. 何から手をつけるのが現実的?
迷ったときは、迷子対策(身元確認)→逸走対策→キャリー慣れの順に整えると、他の準備が無駄になりにくいです。物品を増やす前に「逃げない」「運べる」を固めると、当日の行動が安定しやすくなります。
次の内容
備えを“避難判断”につなげるための確認ポイントを整理する。
Q2. 備蓄は何日分を目安に考えればいい?
日数は地域や災害規模で変わるため、数字を一つに決め切るより、短期間を確実に回す→延長を無理なく増やすの順が現実的です。まずは水・フード・トイレ・衛生を「詰まらず運用できる形」にし、置き場所や消費期限、廃棄まで含めて延長を考えると不足が見えやすくなります。
次の内容
備蓄を“量”だけで終わらせず、代替手段と回し方の考え方を確認する。
Q3. 避難所が「ペット可」なら一緒の部屋で過ごせる?
「ペット可」は、同じ居住空間で一緒に過ごせることを意味しない場合があります。屋外や別室の指定、キャリー必須など、運用は避難所ごとに異なることがあります。平時に飼養場所・受け入れ条件・運用ルールを確認し、想定に合わせて必要物品の優先順位を立てておくと安心です。
次の内容
避難先の候補を複数持つ考え方を整理する。
Q4. 猫がキャリーに入らない/捕まえられないのが不安
普段からキャリーを出しっぱなしにし、落ち着ける場所として慣らすと、拒否反応が出にくくなることがあります。急ぐ場面では、タオルで包む、洗濯ネットを使うなど負担を減らす方法が役立つこともあります。いきなり当日を迎えるより、短いステップで慣らしておく方が安全につながりやすいです。
次の内容
移動のしやすさと迷子対策を同時に高める工夫を確認する。
Q5. 車中避難は犬猫にとって安全?
状況によっては選択肢になりますが、暑さ寒さ、換気、騒音、脱走リスクなど注意点が増えます。短時間であっても、体温調整と安全確保(リード・キャリー・逸走防止)が優先になります。長引く可能性がある場合は、別の避難先候補も持っておくと判断がしやすくなります。
次の内容
停電時の体温管理と電源・情報の優先順位を整理する。
Q6. 停電時、情報は何を見ればいい?
情報源を増やしすぎると、当日探す時間が増えることがあります。自治体の防災ページ、避難所情報、ハザードマップ、警報・避難情報など、見る場所を少数に固定し、ブックマークやホーム画面に置くと迷いが減ります。通信不安定も想定して、必要な情報はスクリーンショット等で残しておくと安心です。
次の内容
紙+スマホの二重化で、家族共有を強くする方法を確認する。
Q7. いつ受診を含む相談を考えればいい?
災害時は環境変化で一時的に食欲が落ちることもありますが、元気が明らかに落ちた状態が続く、呼吸が苦しそう、嘔吐や下痢が繰り返される、排尿排便が出ない・痛がるなどは、早めに専門家へ相談する判断材料になります。かかりつけが難しい状況も想定し、連絡先を複数用意しておくと安心です。
次の内容
健康情報の整理と常備薬の管理を、家族が代わりに説明できる形に整える。
Q8. 家族で意見が割れて動けないのが心配
当日に話し合う余裕は減りやすいので、平時に「どの条件なら動くか」をざっくり揃えておくと迷いが減ります。避難先候補、役割分担、犬猫の確保の順番を短いメモにしておくと、同じ判断で動きやすくなります。
次の内容
準備の全体をまとめ、抜けやすいポイントを最後に確認する。
まとめ
災害前のペット防災は、物をそろえるほど安心に見えますが、犬猫がいる家庭では「当日、迷わず動けるか」で差がつきやすくなります。準備の順番を間違えないことが、現実的な備えにつながります。
まず優先したいのは、命と迷子を防ぐ準備です。身元確認を二重化し、玄関や窓まわりの逸走対策を整え、キャリー/クレートに慣らして「運べる状態」を作ります。ここが固まると、避難や生活の準備が現実的に回りやすくなります。
次に、避難の判断材料を揃えます。ハザードマップで自宅の弱点と避難の方向を把握し、避難先を複数候補で考え、同行避難の受け入れ条件や飼養場所の違いを確認します。避難所のルールは地域や施設で異なるため、平時に確認しておくほど当日の迷いが減ります。
生活維持の備えは、日数の数字だけでなく、回し方と代替手段が重要です。水・フード・トイレ・衛生は、断水や清掃の難しさまで含めて「詰まらない運用」を作ると、長引いたときも破綻しにくくなります。停電に備えるときは、体温調整、電源の使い道、情報の入口を少数に固定することで、必要なところに力を使いやすくなります。
最後に、準備を「家族で共有できる形」にして完成させます。紙とスマホを併用し、避難先の優先順位、連絡先、犬猫の情報、持ち出しの順番、役割分担を1枚にまとめると、当日の混乱が減ります。完璧を目指すより、誰でも取り出せて同じ行動ができる状態に近づけることが大切です。



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