🩶【導入章:犬を迎えたばかりでもできる「防災の考え方」】
災害対策は「特別な準備」より、生活の延長で考える
犬との暮らしを始めた直後は、食事・トイレ・しつけで手一杯になりがちです。防災も同じで、完璧を目指すより「普段の生活で困りそうな点を先に減らす」発想が役立ちます。地震や台風、停電など種類は違っても、困りごとは「移動できない」「情報が入らない」「物が足りない」「犬が落ち着かない」に集まりやすいので、まずはその4つに備えると整理しやすくなります。
犬は環境の変化に敏感。飼い主の判断がそのまま支えになる
大きな音や見慣れない人の動きで、犬は普段より警戒したり、抱っこやケージを嫌がったりすることがあります。だからこそ、災害時は「犬を落ち着かせる技」よりも、飼い主が迷わない段取りが重要です。家にいる前提(在宅避難)と、外へ出る前提(避難)の両方を軽く想像しておくと、判断が早くなります。
まず確認したいミニチェックリスト(3分でOK)
今日の時点で、次の項目だけでも確認してみてください。
①犬の身元が分かる情報(迷子札・連絡先の控え)
②キャリーやクレートに入れるか(短時間でよい)
③水と食事の「いつもの量」の目安
④トイレの代替手段(シート・袋など)
⑤かかりつけ先と緊急連絡の候補。
揃っていないものが見つかったら、どれから整えるかを自分の生活に合わせて決めるのが第一歩です。
🩶【第1章:飼い始めに決めておくと迷いにくい「基本方針」】

在宅避難と避難の「分かれ道」を先に作る
災害時は、まず家に留まれるか(在宅避難)を考え、難しければ移動(避難)を検討する流れになりやすいです。飼い始めの段階で「どんな状態なら家に留まる/出る」をざっくり決めておくと、迷いが減ります。例えば、停電だけなら室温や水の確保状況で判断、豪雨や洪水が想定される地域なら早めの移動も視野、といった考え方です。大事なのは“正解探し”ではなく、自分の家の条件に合わせて判断材料を持つことです。
犬の安全確保は「脱走防止」と「落ち着ける場所」から
災害時に起きやすいトラブルの一つが、驚いて飛び出す・迷子になることです。玄関や窓の開閉が増える場面ほど起こりやすいので、「開ける人を決める」「開ける前に犬の位置を確認する」など、家のルールを作ると現実的です。あわせて、犬が落ち着ける場所(クレート、ケージ、部屋の一角)を日常の中で“安心できる場所”にしておくと、揺れや騒音があっても立て直しやすくなります。
連絡先と情報の持ち方を「2系統」用意する
混乱時は、スマホが使いにくい・充電が減る・連絡が取れないことがあります。そこで、情報の持ち方は2系統あると安心です。
例えば、
①スマホに連絡先や健康情報をメモしておく
②紙でも同じ内容を控えて、財布や防災袋に入れる、
のように分けます。
犬の名前、特徴、写真、既往歴、服薬、かかりつけ先、緊急時に相談できる人(家族・友人)などをまとめておくと、避難先や移動中でも説明がしやすくなります。
飼い主の行動を軽く練習しておく
「練習」といっても大げさにする必要はありません。玄関までクレートで運ぶ、ハーネスとリードを落ち着いて装着する、犬を呼んで近くに集める、といった短い行動を普段から試すだけで十分です。災害時は犬の反応がいつもと違う可能性があるため、飼い主側が手順を体で覚えていると対応が安定します。できる範囲で、生活の中に小さく組み込むのが続けやすい方法です。
🩶【第2章:犬の「身元」と「健康情報」を整える—迷子・受診時の混乱を減らす】

迷子対策は「身元が伝わる状態」を作ることから
地震の揺れや台風の片付けなどで人の出入りが増えると、犬が驚いてすり抜けることがあります。ここで大切なのは、もし離れてしまっても「この犬は誰の犬か」が伝わる状態を作ることです。首輪やハーネスに連絡先が分かる情報を付ける、犬の特徴が分かる写真を手元に残す、呼び名(通称)や毛色・体格などを短く説明できるようにしておくと、周囲の人が手助けしやすくなります。災害時は情報が錯綜しやすいため、短く・分かりやすい形が役立ちます。
健康情報は「一枚で説明できる形」にまとめる
避難先や移動中に体調を崩した場合、初めて会う人に状況を伝える場面が出てきます。そのときのために、健康情報は“ひとまとまり”にしておくと安心です。具体的には、年齢、性別、体重の目安、持病やアレルギー、普段の食事の種類、飲んでいる薬、苦手な処置(触られると嫌がる場所など)を簡単に書き出します。情報が多すぎると見返しにくいので、「まず伝える項目」と「補足」の二段構えにすると整理しやすいです。
ワクチン・投薬などは「今の状態」を言えるようにする
災害時は、いつもの通院が難しくなる可能性があります。そこで、細かい日付を暗記するよりも、「最近受けたこと」「今続けていること」を説明できると実用的です。たとえば、定期的に通っている診療内容、予防の有無、通院頻度、薬が切れたときの対応方針などを、飼い主の言葉でまとめておくイメージです。体調面で不安がある犬ほど、普段から“伝える準備”があるだけで落ち着いて行動しやすくなります。
紙とスマホ、どちらにも残して「見られる状況」を増やす
スマホは便利ですが、充電切れや電波状況の影響を受けます。逆に紙は濡れや紛失のリスクがあります。どちらか一方に寄せるより、両方に同じ内容を残すと、状況に左右されにくくなります。スマホにはメモや写真、紙には短い要約(連絡先・特徴・健康情報)を入れておくと、必要なときに取り出しやすいです。ここまで整えておくと、次章以降の「食事・水・トイレ」や「在宅/避難」の準備が、より現実的に組み立てやすくなります。
🩶【第3章:災害時に困りやすい「食事・水・トイレ」を現実的に整える】

まずは「いつもの量」を把握して、備えの基準にする
犬の防災で見落とされやすいのが、食事や水の“必要量の基準”です。正確な数字を暗記するより、普段どれくらい食べて飲むかを自分の言葉で説明できると判断がしやすくなります。たとえば「朝夕の2回でこの器1杯」「散歩後によく水を飲む」など、生活の中の目安で十分です。これが分かると、停電や断水、物流の遅れが起きたときに「どれくらい持つか」「何を優先するか」を落ち着いて考えられます。
食事は“いつも通り”に寄せつつ、変化に備える
急に環境が変わると、犬は食欲が落ちたり、逆に落ち着かずに早食いしたりすることがあります。だからこそ、災害時は特別な工夫よりも「できるだけ普段のリズムに近づける」ことが助けになります。食事の時間帯を大きく崩さない、与え方を変えすぎない、食べないときは無理に増やさず様子を見る、などの方針を決めておくと迷いにくいです。また、体調を崩しやすい犬は、食事の変化でお腹を壊すこともあるため、変化の幅を小さくする考え方が役立ちます。
水は「飲める形」を複数用意しておく
断水や停電のときは水の確保そのものが難しくなるだけでなく、器が倒れたり、犬が落ち着かず飲まなかったりすることもあります。そこで、水は“量”だけでなく“飲める形”を複数持つと現実的です。たとえば、普段の器のほかに、倒れにくい器、持ち運びしやすい容器など、状況に応じて使い分けられる形があると助かります。避難中はこまめに与える発想が合うこともあるため、散歩中に飲む練習をしておくのも一つの手です。
トイレは「場所が変わる」前提で、失敗を減らす工夫をする
避難先や在宅避難の片付け中は、いつものトイレ環境が作れないことがあります。犬は場所や匂いが変わると排泄を我慢しやすく、結果として体調に影響が出ることもあります。そこで、トイレは「失敗しない」より「失敗しても片付けやすい」を基準に考えると続けやすいです。シートを敷く場所を決める、匂いのついたシートを少し残して落ち着かせる、排泄のタイミングを見て短い散歩を挟むなど、普段の生活に近い形に寄せると安定しやすくなります。次章では、在宅避難と避難それぞれで“どこまで持ち出すか”の考え方を整理します。
🩶【第4章:在宅避難と避難の準備—「持ち出す/残す」を決めておく】

在宅避難は「家が安全に使えるか」で判断する
災害時にまず考えたいのは、家に留まれるかどうかです。停電だけなら自宅で過ごせる場合もありますが、豪雨や洪水の恐れがある地域、建物の損傷が疑われる場合などは早めに移動を考えることもあります。ここで大切なのは、避難=外に出るだけではなく、在宅避難も「備えが必要な選択肢」だと理解しておくことです。家に留まると決めた場合でも、室温の変化、水の確保、トイレの確保、情報収集が課題になりやすいので、どれが弱点になりそうかを先に想像しておきます。
避難の準備は「犬を安全に移動できるか」が中心になる
避難するときは、犬が安全に移動できる状態を最優先に考えます。人が多い場所や騒がしい環境では、普段おとなしい犬でも急に引っ張ったり、抱っこを嫌がったりすることがあります。そのため、リードだけに頼るより、クレートやキャリーなど“囲える移動手段”を使えると行動が安定しやすいです。犬の体格や性格によって合う形は違うため、普段の生活の中で短時間でも入る練習をしておくと、いざというときの負担が減ります。
「持ち出すもの」を一度決めて、迷いを減らす
災害時は、何を持つか迷っている時間が長いほど焦りやすくなります。そこで、最初に決めたいのは“最低限これだけあれば説明できる・過ごせる”という核になるセットです。
例としては、
①身元情報と連絡先(紙とスマホ)
②犬を管理できるもの(リード・ハーネス・クレート等)
③食事と水を与える道具
④排泄の片付けに必要なもの
⑤常用しているもの(薬など)。
この5つを基準にして、家の状況や季節に合わせて追加する考え方が現実的です。
留守番中の災害も想定して「家の中の配置」を整える
飼い始めの人ほど見落としがちなのが、留守中に災害が起きた場合です。犬が驚いて動き回ると、倒れた物に挟まる、コードをかじる、割れた物でケガをするなどのリスクが増えます。できる範囲で、倒れやすい家具の周辺を片付ける、犬が入れないエリアを作る、危険物を高い位置へ移すなど、家の中の“安全な範囲”を広げておくと安心です。次章では、犬の行動特性を踏まえて、災害時に起こりやすい反応と接し方を整理します。
🩶【第5章:犬の行動特性を踏まえた「落ち着き」と「安全」の作り方】

いつもと違う反応は「異常」ではなく、自然な変化として捉える
地震の揺れ、台風の風音、停電で暗くなること、人の出入りが増えることは、犬にとって大きな刺激です。その結果、吠える・震える・隠れる・甘える・食べない・トイレを我慢するなど、普段と違う反応が出ることがあります。こうした変化は“性格が悪くなった”という話ではなく、環境が変わったときの自然な反応として起こり得ます。飼い主が「まず安全を確保し、落ち着く時間を作る」と決めておくと、焦りにくくなります。
落ち着かせるより先に「逃げ道を塞ぐ」意識を持つ
不安な犬ほど、隙間から外へ出ようとしたり、普段入らない場所に潜り込んだりします。ここで重要なのは、声かけで止めるより先に“物理的に逃げ道を減らす”ことです。玄関・窓・ベランダの出入りをする前に犬の位置を確認する、リードを早めに装着する、クレートやケージに入れて待機できるようにするなど、行動の順番を決めておくと現実的です。家族がいる場合は、誰が犬を見るかを決めるだけでも混乱が減ります。
安心できる「いつもの合図」と「居場所」を使う
犬は言葉を理解するというより、いつもの流れや合図で安心しやすい面があります。例えば、普段から「ハウス」「おいで」「待て」など短い合図を使っているなら、災害時も同じ合図で行動を整える方が落ち着きやすいです。また、安心できる居場所(クレート・ケージ・毛布のある角など)があると、周囲が騒がしくても気持ちを立て直しやすくなります。大きな変化の中でも“変わらない要素”を残すことが、犬にとっての支えになります。
飼い主の心構えは「できることを一つずつ」に寄せる
災害時は情報が多く、正解を探そうとすると疲れやすくなります。そこで、飼い主側は「安全確保→水→トイレ→食事→休む」のように優先順位を単純にしておくと動きやすいです。犬の様子が気になるときほど、飼い主の動きが速くなりがちですが、ゆっくりした声と落ち着いた手順が犬の安心につながることもあります。次章では、停電や豪雨など状況別に、家で過ごすときの注意点と復旧後の見直しポイントを整理します。
🩶【第6章:状況別に考える—停電・豪雨・地震のとき家でできること】

停電は「暑さ寒さ」と「暗さ」の影響を先に見る
停電になると、空調・照明・給水が使いにくくなり、犬は落ち着かなくなることがあります。まずは室温の変化と換気、安全に過ごせる場所(倒れやすい物が少ない部屋)を確保します。暗い中で動き回るとケガにつながりやすいので、犬はクレートやケージで待機できる形が現実的です。散歩は無理に行かず、外の状況と犬の様子を見て判断します。
豪雨・洪水・台風は「移動が難しくなる前」に考える
雨や風が強まると、外に出ること自体が危険になったり、道路が通れなくなったりします。家に留まる場合でも、浸水しやすい場所(低い階、玄関周り)から犬を遠ざけ、避難する可能性があるなら移動手段(抱える・クレートで運ぶ)を先に整えます。「今は大丈夫そう」に見えても、状況が急に変わることがあるため、判断材料(雨量の増え方、周囲の水位、避難情報)を早めに確認する姿勢が役立ちます。
地震後は「犬の体」と「家の危険」を落ち着いて点検する
揺れの後は、割れ物・倒れた家具・落下物などで犬がケガをすることがあります。まず犬の体を軽く触って、痛がる場所がないか、歩き方がいつも通りかを確認します。同時に、ガラス片や尖った物がある場所は近づけないように動線を変えます。犬が興奮しているときは、声かけよりも安全な場所に誘導し、落ち着く時間を作ることを優先します。
復旧後に役立つ「見直しチェックリスト」
落ち着いた後に、次の点を短く振り返ると備えが現実に近づきます。
①犬が落ち着けた場所はあったか
②脱走しやすい場面はどこだったか
③水・食事・トイレで困った点は何か
④連絡先や健康情報はすぐ出せたか
⑤家の中で危険だった配置はどこか。
できたことと改善点をメモしておくと、次に同じ状況が来ても判断しやすくなります。
🩶【まとめ章:犬を飼い始めた人の防災は「迷わない準備」から】
完璧より「判断しやすい形」を作る
犬との暮らしを始めたばかりの防災は、全部を揃えることよりも、災害時に迷いにくくする工夫が大切です。在宅避難か避難かの考え方、犬の安全確保(脱走防止と落ち着ける場所)、連絡先や健康情報の整理など、判断の土台を先に作ると行動が安定します。状況は災害の種類や住環境で変わるため、「自分の家では何が弱点になりそうか」を基準に考えるのが現実的です。
犬の反応は変わりやすい。飼い主の段取りが支えになる
揺れや風音、暗さ、人の出入りが増えるなど、環境の変化で犬の行動は普段と違って見えることがあります。だからこそ、落ち着かせることに集中するより、逃げ道を減らす・安全な場所に誘導する・水やトイレを確保する、といった段取りを優先すると負担が減ります。短い練習(クレートに入る、玄関まで移動する、呼び戻す)を日常に入れておくと、いざという時の動きが整いやすくなります。
食事・水・トイレは「いつも通りに近づける」発想が役立つ
災害時は特別な方法より、普段のリズムに近づける方が犬の負担が小さくなることがあります。必要量の目安を把握し、水は飲める形を複数用意し、トイレは場所が変わる前提で片付けやすさも含めて考える。こうした整理だけでも、停電や豪雨などで生活が乱れたときに落ち着いて対応しやすくなります。
最後に:今日できる“1つ”を決める
防災は一度で完成させなくても大丈夫です。まずは「身元情報をまとめる」「連絡先を紙にも残す」「犬の落ち着ける場所を決める」など、1つだけ選んで整えるところから始めると続けやすいです。落ち着いた後に見直しチェックリストで振り返り、改善点を少しずつ足していくことで、犬と飼い主の両方が過ごしやすい備えに近づきます。



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