地震や台風、豪雨、豪雪など、日本は四季ごとに異なる災害リスクを抱えています。そして人間だけでなく、大切な家族であるペットもまた、その影響を強く受けます。特に犬や猫、小動物は環境の変化や気温の上下に敏感で、災害時には体調不良やストレスが重なり命の危険にさらされることもあります。実際に、夏場の停電でクーラーが使えず熱中症になるケースや、冬場の避難所で十分な防寒対策ができず体調を崩すケースも報告されています。この記事では「夏」と「冬」に分けて、災害時にペットを守るための実践的な対策を解説します。今のうちに準備を整えておくことで、非常時に冷静に対応でき、愛するペットを守る大きな力になります。
夏の災害時に注意すべきペット対策

夏の災害時で最も注意すべきは「高温」と「湿度」です。停電や断水が発生すれば冷房や水の供給が止まり、ペットの健康を守るのが難しくなります。以下では、具体的な注意点と対策を紹介します。
1. 熱中症対策を徹底する
- 熱中症とは、体温調節ができずに体温が異常に上がり、臓器にダメージが及ぶ状態を指します。犬は人間よりも汗腺が少なく、猫も高温多湿に弱いため、特に注意が必要です。
- 災害時に停電で冷房が使えない場合、保冷剤をタオルで包んでケージに置く、ポータブル扇風機を準備するなどの工夫が有効です。
- 初心者が陥りやすい失敗は「直に保冷剤を当てて低体温症にしてしまう」こと。必ずタオルで包み、ペットが自分で避けられるように配置するのが正解です。
2. 水分補給を確保する
- 夏の災害時は断水リスクが高く、ペット用の飲料水を確保しておくことが必須です。
- 1日あたり「体重1kgにつき50ml」を目安に、最低でも3日〜1週間分の水を準備しておきましょう。例えば5kgの猫なら1日約250ml、1週間で1.75Lが必要になります。
- よくある失敗は「人間用の水だけ備蓄していてペット分を忘れる」こと。解決策は、ペット用の小分けボトルを常備し、ローリングストック法で入れ替えることです。
3. 避難所での暑さ対策
- 避難所は冷房が十分でない場合が多く、ペットには大きな負担になります。
- 扇風機や遮光シート、折り畳みケージに敷く冷感マットを持参することで、体感温度を下げられます。
- 失敗例として「キャリーを直射日光の当たる場所に置き、猫がぐったりした」というケースがあります。避難所では常に日陰や風通しの良い場所を確保することが重要です。
4. 食中毒と衛生管理
- 夏場はフードや水が傷みやすく、下痢や嘔吐の原因になります。開封後のドライフードは密閉容器に入れ、ウェットフードは小分けタイプを用意して早めに消費しましょう。
- 失敗例:1袋大容量フードを避難所に持ち込み、開封後に湿気でカビが発生。
解決策:小分けパックを用意し、消費しやすい量を持参する。
✅ 夏の災害時は「熱中症」「水分不足」「暑さによるストレス」が三大リスクです。日常的に暑さ対策グッズや水の備蓄をしておけば、非常時にも落ち着いて対応できます。
冬の災害時に注意すべきペット対策

冬の災害では「寒さ」と「乾燥」が大きなリスクとなります。停電や暖房器具の使用制限、避難所での冷たい環境などは、人間以上に体温調整が苦手なペットにとって深刻な問題です。ここでは、冬場に必要な具体的な備えと注意点を解説します。
1. 低体温症を防ぐための防寒対策
- 低体温症とは、体温が異常に低下して生命活動に支障が出る状態です。犬や猫は被毛である程度の防寒が可能ですが、室温が10℃以下になると小型犬や短毛種の猫は特にリスクが高まります。
- 避難所や車中避難では毛布やペット用ブランケットを重ね、キャリーの外側を覆うことで冷気を防げます。
- 初心者が陥りやすい失敗は「服を着せれば安心」と考えること。服だけでは十分な保温ができないため、必ず毛布や敷物と併用することが大切です。
2. 暖房器具が使えない状況への備え
- 災害時は電気やガスが止まり、エアコンやストーブが使えないことがあります。そんな時は「カイロ」や「湯たんぽ」を活用しましょう。
- カイロは必ずタオルや布で包み、直接体に当てないようにします。湯たんぽはペットボトルにお湯を入れて代用できます。
- 失敗例:カイロを直接ケージに入れて低温やけどを起こした。
解決策:必ず布で包み、猫や犬が自由に距離を取れるよう配置する。
3. 食事と水分補給に注意
- 冬は空気が乾燥するため、水分不足から尿路結石や便秘になるリスクがあります。水をあまり飲まないペットには、ウェットフードやスープタイプのフードを活用すると効果的です。
- 避難所で寒さの影響から食欲が落ちるケースもあるため、温められるフードを用意しておくと食べやすくなります。
- 失敗例:寒さで猫が水を飲まず、数日で膀胱炎を発症。
解決策:常温よりややぬるめの水を与えたり、ウェットフードを混ぜて水分量を増やす。
4. 避難所での寒さ対策
- 避難所の床は冷たく、ペットの体温が奪われやすい環境です。厚めのマットや断熱シートをキャリーの下に敷くだけで効果があります。
- 他の避難者の迷惑にならないようにしながら、毛布やパーテーションで仕切ると視覚的にも落ち着きます。
- 失敗例:避難所で床に直置きし、犬が震え続けて体調を崩した。
解決策:必ずマットや段ボールを敷いて床冷えを防ぐ。
5. 飼い主自身の体調管理も重要
- 冬の避難生活は人間にとっても厳しい環境です。飼い主が体調を崩すと、ペットの世話もままならなくなります。
- 体を温める衣類や食料をしっかり備え、飼い主が健康でいることが結果的にペットの安心にもつながります。
専門用語の解説
- 低体温症:体温が35℃以下に低下し、生命の維持が困難になる状態。小型犬や老犬、老猫は特に注意が必要。
- 断熱シート:アルミ素材などを使い、床からの冷気を遮断するシート。アウトドア用の安価なものでも十分効果がある。
冬の災害時は「低体温症」「乾燥」「寒さによる食欲不振」が大きなリスクです。これらを防ぐには、事前に毛布・断熱グッズ・水分補給対策を揃えておくことが不可欠です。飼い主とペットが一緒に暖かく過ごせる準備こそ、冬の防災対策の基本なのです。
まとめ:季節別対策を組み合わせて実践する方法

夏と冬では、ペットが直面するリスクは大きく異なります。夏は「高温」「湿度」「水分不足」、冬は「低体温」「乾燥」「寒さによる食欲低下」が主な課題です。しかし、実際の災害では季節が限定されているわけではなく、長期避難になれば両方のリスクを考慮する必要があります。そのため、防災対策は「季節ごとに分けて準備する」のではなく、「通年で使えるもの」と「季節ごとに入れ替えるもの」を組み合わせることが効果的です。
1. 通年で必須の備え
- フードと水の備蓄
犬や猫、小動物に共通して必要なのはフードと飲料水です。フードは「ローリングストック法」で管理し、常に新しいものを用意しておきましょう。水は1週間分を目安に確保しておくことが理想です。失敗例として「自分の飲料水だけを備えてペット用を忘れた」というケースが多く見られます。ペット用に必ず別枠で用意することが重要です。 - キャリーやクレート
避難所や車中泊で欠かせないのがキャリーです。普段から慣れさせておき「安心できる隠れ家」として使えるようにしておきましょう。初心者がやりがちな失敗は「災害時に初めてキャリーを使うこと」。その場合、猫や犬が嫌がって暴れる原因になります。日常生活から練習しておくことが解決策です。 - 健康記録や常備薬
ワクチン証明や健康診断書、常備薬は緊急時に必要になることがあります。コピーを防災バッグに入れ、避難所や動物病院で提示できるよう準備しておきましょう。
2. 季節ごとに入れ替えるもの
- 夏用グッズ
冷感マット、ポータブル扇風機、保冷剤(タオルに包んで使用)など。失敗例として「直に保冷剤を置いて低体温症を起こした」ケースがあります。必ず安全に使える工夫をすることが必要です。 - 冬用グッズ
毛布、断熱シート、湯たんぽやカイロなど。注意点は「低温やけどを防ぐこと」。布で包み、ペットが自ら距離を取れるように配置するのがポイントです。 - 入れ替えの習慣
季節の変わり目に「衣替え」と一緒に防災バッグの中身も見直すのがおすすめです。これを習慣にすれば、常に最新の状態を維持できます。
3. 心構えと行動の習慣化
- 定期的なシミュレーション
避難行動は「頭で理解していても、実際にはうまくいかない」ことが多いです。キャリーを持ち出し、玄関から避難所まで歩いてみるなど、シミュレーションをしておくと安心です。 - 家族で情報を共有
誰がペットをキャリーに入れるのか、誰がフードや水を持つのか、役割分担を決めておくと混乱が防げます。 - 飼い主の冷静さが鍵
ペットは飼い主の不安を敏感に感じ取ります。慌てて大声を出したり無理に動かそうとすると、ペットのストレスを増幅させるだけです。深呼吸して落ち着いた行動を心がけましょう。
専門用語の解説
- ローリングストック法:日常的に食品やフードを消費し、消費した分を補充することで備蓄を循環させる方法。賞味期限切れを防ぎ、常に新しい備蓄が確保できる。
- 低体温症:体温が異常に低下する状態。特に小型犬や老猫はリスクが高く、冬の災害時には命に関わる。
最後に
ペットの防災対策は「夏用」「冬用」と分けて考えるだけでなく、「通年で必要な備え」と「季節ごとに変える備え」をバランス良く整えることが大切です。小さな工夫と習慣の積み重ねが、非常時にペットの命を守る最大の力になります。今日からできる一歩を踏み出し、季節ごとの準備をしっかり整えておきましょう。



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